東京五輪代表監督に「可変システム」を操る森保一氏が選ばれた理由とは?
2020年の東京五輪に臨むサッカーの男子日本代表監督に、サンフレッチェ広島前監督の森保一氏(49)が就任することが決まった。12日に都内で行われた日本サッカー協会の月例理事会で技術委員会から推挙され、承認された。 理事会後に取材に応じた西野朗技術委員長(62)は、2012年以降の4年間で広島を3度のJ1王者に導いた森保氏の手腕を「Jリーグのなかでも、最高の実績をもった指導者の一人」と高く評価して言葉を弾ませた。 56年ぶりとなる自国開催の五輪において、23歳以下の若手が大半を占める代表チームの指揮を誰に託せばいいのか。選定にあたった技術委員会は、個々の名前うんぬんよりも、まずは候補者に相応しい基準や指導歴を議論した。西野委員長が説明する。 「育成年代における指導経験と国際経験をもち、その上でJリーグのトップレベルの監督を経験し、さらに実績とチーム作りに対する評価をもつ指導者であるべきだと私は考えたし、そういう視点で技術委員会のなかでも意見を交換しました」 ベガルタ仙台でプレーした2003年をもって引退した森保氏は、翌年に前身のマツダ時代からボランチとしてプレーした古巣・広島の強化部育成コーチに就任。指導者としての道を歩み始めた。 2005年からはU‐19日本代表コーチを兼務。吉田靖監督をサポートしながら、2007年にカナダで開催されたFIFA・U‐20ワールドカップのベスト16進出を経験。一方で中国地域担当のトレセンコーチとして、普及や逸材の発掘にも努めている。 この時点で森保氏は、技術委員会が掲げた「育成年代における指導経験と国際経験」を十分に満たしていた。さらに広島及びアルビレックス新潟のコーチをへて、2012年から広島の監督に就任。J1を3度制した日本人監督は、現時点で森保氏しかいない。 残る「チーム作りに対する評価」の高さに関しては、2012年のDF森脇良太、2013年のGK西川周作(ともに現浦和レッズ)、2014年のMF高萩洋次郎(現FC東京)らと毎オフのように主力選手が移籍しながら、それでもチーム力を維持・発展させてきた軌跡が如実に物語る。 西野委員長はヴィッセル神戸及び名古屋グランパスの監督として、森保監督が率いる広島と対峙した経験をもつ。当時の習慣から「つい『ポイチ』という愛称で呼んでしまう」と苦笑いしながら、森保氏に一本化された最大の理由をこう語る。 「メンバーが変わってもぶれずに自分のスタイルを踏襲していく力と、それでも変化していくものに柔軟に対応しながら戦える力が彼にはある。彼の人格的な部分、たとえばサッカーに対する豊富な知識、周囲を引きつける求心力、若手選手に対するさまざまなアプローチの仕方、謙虚かつ真摯にサッカーに向き合う姿勢が指導力になっていると思う」