名家の名字「近衛」。藤原道長の子孫、公家世界の頂点に立つ家柄
名家の名字:近衛(このえ)
「名家」と聞いて、どういう家柄を思い浮かべるでしょうか。様々なジャンルに「名家」と呼ばれる家は存在し、「名家」の判断は人それぞれですが、その中で誰でも「名家」として認めるのが公家でしょう。 江戸時代、公家は140家ほどありました。明治時代にはすべてが子爵以上の華族となっており、公的にも認められた名家です。 これらの公家の中にもいくつかの家格があります。公家の大半は藤原氏の一族で、その中でもNHK大河ドラマ「光る君へ」に登場している藤原道長の子孫が嫡流として摂政・関白を独占するなど、最も高い地位についていました。 そして、道長の子孫は鎌倉時代に5家に分裂して五摂家と呼ばれました。この最も家格の高い五摂家の中でも筆頭とされるのが近衛家で、まさに公家世界の頂点に立つ家柄です。 さらに江戸時代初期には、後陽成天皇の第四皇子信尋が近衛家を継ぐなど、天皇家の血も受け継いでいます。 近衛家は、ただ家柄がいいというだけではありません。明治維新後は政治家となり、戦時中近衛文麿は首相として3度にわたって組閣しています。文麿の長男文隆は戦前にゴルフ選手として活躍し、二男通隆は歴史学者で東京大学史料編纂所教授をつとめました。また文麿の弟の秀麿は指揮者として新交響楽団を創設するなど、一族は様々な分野で活躍しました。
森岡浩/Hiroshi Morioka
姓氏研究家 1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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