ヘッジファンド、米大統領選を目前にドル高見込むポジション拡大
(ブルームバーグ): ヘッジファンドなど投機筋は、米大統領選挙を目前に控えて安全資産需要が高まる中、ドルの一段高に備えている。
ブルームバーグが集計した米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、10月29日時点でヘッジファンドや資産運用会社、投機筋によるドル強気ポジションは約178億ドル(約2兆7200億円)。10月中旬にドルの弱気ポジションを解消した後、29日終了週には強気ポジションを80億ドル余り増やした。
ハリス副大統領とトランプ前大統領の間で大接戦が続く大統領選の投票日が迫る中、ドル強気論が台頭している。ウォール街の一部には、米国の貿易政策が保護主義に転換する事態に備える動きがある。
ウェルズ・ファーゴのストラテジスト、アループ・チャタジー氏は、「さらに接戦になれば、市場の不確実性が高まり、安全資産としてのドルには追い風が吹く」と指摘した。
1日にはドルが上昇し、ドルの大幅変動に備えるコストは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が金融市場に衝撃を与えていた2020年4月以来の高水準に達した。ブルームバーグ・ドル・スポット指数のインプライドボラティリティー(IV、予想変動率)の指標は、選挙が近づく中で急上昇している。
マネックスの外国為替トレーダー、ヘレン・ギブン氏は「賭け市場がトランプ氏の当選確率を変化させているため、世論調査では必ずしも同じような分裂を示さなくとも、トレーダーは守りのポジションで対応している。つまり、この場合はドル買いということだ」と指摘。「少なくとも、新政権の貿易政策の重大さを市場が見極められるまではそうだ」と付け加えた。
ウォール街のストラテジストは、トランプ氏が公約した関税が少なくとも短期的にはドルを支え、中国人民元やメキシコ・ペソなどの通貨に打撃になるとの見方で広く一致している。しかし、トランプ氏は世界の準備通貨であるドルが強過ぎるとも主張しており、こうした相反する考えのバランスをどう取るかはまだ見通せない。