「10失点した後ですら球場に来るのが楽しかった」今永昇太が振り返る充実のメジャー1年目と日本開幕戦への決意<SLUGGER>
気を取り直して、来年の話をしよう。気の早い話になるが、来春、日本でドジャースとの開幕戦がある。当然、2試合のどちらかの先発を今永に任せるという話になるだろう。 「もしも僕がカブスを運営していたら、ビジネス的にもそりゃ、行ってくれよと思うでしょうし、そういうのも考えながら、どっちかに投げなきゃいけないと思います。相手も決まってるわけなんで、心の準備は少しずつできると思います」 選手にとっての懸念は、3月半ばに海外での開幕戦が行われるため、キャンプインが1週間ほど前倒しになる=オフが短くなることだろう。 「(2023年の)WBCの時に早く作るっていうのを経験したんですけど、やはり、野球選手の身体っていうのは1週間前、2週間前に前倒すようにはできていないんだなという実感もあった。やっぱり、3月の後半に毎年合わせてきているんで、そういう流れになっている、と身体の動きを見ても感じました。でも、そこにいいパフォーマンスを持ってくるのがプロフェッショナルなので、そう呼ばれるようしっかり照準を合わせたい」 そのために彼は「現状維持は衰退と同じ」という考えで、来季を睨んでいる。 「今年やったことが来年通用するはずがないので、変化を恐れずにやる必要がある。前に言いましたけど、もしかしたら、僕の野球の折り返し地点をすでに通過してるかもしれないですし、いつ野球が終わってもいいような取り組みをここでやるっていうのが一番、後悔しないことだと思う」 彼がそう言ってから、1週間以上が経っている。 カブスに競り勝ってプレーオフ進出の最後の1枠=ワイルドカード3枚目を獲得したメッツが、カブスの天敵とも言えるナ・リーグ中地区優勝のブルワーズを逆転勝利で葬り去った。ア・リーグでもワイルドカード3位のタイガースが、西地区優勝のアストロズを打ち負かすなど「カブスがいない10月」は大盛況だ。 だからこそ、かもしれない。件の「シーズン総括会見」の際、こちらが繰り出した「メジャー1年目は楽しかったのでしょうか?」という質問に、何の躊躇いもなく、答えた今永の誇りに満ちた表情を思い出すと、何だか幸せな気持ちになってしまう。 それを丸々お伝えして、今永のルーキーシーズンの総括を締めたい。 「最高に楽しかったですね。日本の時にもそういうのはありましたけど、今年は球場に来るのが毎日、凄く楽しかったですし、メッツ戦で10失点した後ですら、ここ(リグリー・フィールド)に来るのが楽しかった。数字だけ見れば『良いシーズンだったね』と思ってもらえるでしょうけど、凄く苦しみながら、今シーズン過ごしたなというのもある。それでも球場に来る時、ロッカーに入る時とかは凄く楽しい気持ちで、前向きな気持ちで、このクラブハウスに1年間、入ってこられたなという自負があります」 文●ナガオ勝司 【著者プロフィール】 シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
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