日本製鉄・橋本英二会長「受注を一部カットせざるを得ない」と厳しい交渉も~単独取材
■「お互いにサプライチェーンを守るために応分の負担をしないといけない」
Q.2021年、自動車メーカーなどに対して橋本会長自ら価格交渉を行ったと聞きました。 橋本会長 自動車メーカーだけじゃなくて、あらゆる業界に対してお願いして認めてもらったわけですが、これは理屈だけではなかなか実現しないんです。最終的には、私ども自身が当時抱えていた余剰能力を大幅に削減した上で、「一定の価格の是正を認めてもらわない限りは受注を一部カットせざるを得ません」という厳しい交渉にまで至りました。その結果、認めていただいたということです。 最初の時は交渉も大変でしたけれども、今ではやはり「外部要因によるコストアップというのは、お互いにサプライチェーンを守るために応分の負担をしないといけない」という考え方は、取引先の間でも随分、浸透したと思っています。
■世界一の品質で世界一安かった鉄
Q.価格転嫁は数年の中で段々と浸透してきて、今は外部要因に対する価格の引き上げというのはある程度、広く受け入れられているか。 橋本会長 日本全体としてどうかは別として、鉄の価格というのはおよそ30年の間、「品質は世界一だけれども、価格は世界一安い」というのが実態だった。それを是正をしたというのが第1弾です。2021年度にまずファーストステップができて、今も継続しているわけですが、相当浸透してきた。 新しい話として、賃金を上げていかなければいけない、そうでないと適切に労働力の確保ができないというようなこと。今後、日本の競争力を取り戻すために、設備投資をしなくてはならない。そうするとやっぱり外国人の(働き手の)力も借りるなど、いろいろな手立てを打たないと必要人員を確保できないというふうに、労働力の需給構造が変わった。働き手不足というのは日本全体で起きていることですから、これは当然のことながら賃金は上がっていく、上げざるを得ない。 逆に言うと企業物価をそれぞれが、大企業、中小企業関係なく、上げていくと。最終的には国民の皆さんの理解ですが、これが賃上げに繋がれば、それは一つの良い循環ですよね。あとはやはり商品力を高めて、日本は輸出が多いので、海外市場できちんとそれぞれの価格を上げていくということが大事。