ファミレス「ジョイフル」が社員の独立を促しているなぜ、人手不足にあえぐ外食企業の新たな人材確保策の色々
中堅中小外食にとっては、人手の確保をできないことは死活問題ともなりうるのだが、賃上げ競争という同じ土俵に上がるだけでは勝算が乏しいであろう。 一般的に、外食チェーンは、チェーンストア理論に基づき、店舗の標準化、オペレーションのマニュアル化、物流の効率化、といったインフラを構築して、同質の店舗を増やしていくことで収益を上げる、という作りになっている。 この仕組みにおいては、店舗スタッフは決められた作業手順を粛々とこなす労働力として位置づけられており、パート・アルバイトで人件費を抑えた運営をすることを想定している。これはチェーンストアがスピーディーに店舗数を増やして成長していくための仕組みであり、また、安い労働力を提供してくれる人が数多くいることが前提でもあっただろう。
しかし、人手不足という環境下で高い賃金を求めて労働側が選択するという状態になれば、こうした仕組みは成り立たなくなってくる。賃金水準に加えて、やりがいやキャリアアップの展望が見えない組織では、人は定着してくれない。 昔から飲食の世界は労働環境がキツいことで知られているが、それでもいつか独立して自分の店を持つ希望があった。だが、そうした展望がなければ、長い間働いてもらえるはずがない。 売り手市場の下で、外食チェーンが優秀な人材を長く確保するためには、キャリアアップを支援する仕組みや、独立を応援する仕組みを持つことが重要になってきたのである。
■ジョイフルでは総店舗の16%がFC転換 ファミレス業界大手の一角、ジョイフルが、国内直営店の経営をベテラン店長経験者に託す、社員独立フランチャイズチェーン(FC)を本格始動させた。この制度によるFC店は2024年1月で97店舗になったといい、同時点のジョイフルの総店舗611店の約16%が一気にFC転換したという。 会社経験とやる気のある人に任せるほうが、営業力が高まる、という判断であり、最大3店舗まで運営できる制度になっているらしい。なぜ、こうした制度を導入するにいたったのだろうか。