【ドラフト連載】健大高崎・佐藤龍月「プロ行きたい」から手術決断 未来信じてくれた人のために
<高校生編> 未来のスターを要チェック!全3回の新春ドラフト候補企画第1弾は、高校生編。昨春センバツの優勝投手で健大高崎(群馬)の左腕、佐藤龍月投手(2年)は「高卒でプロ」が目標も、今は懸命なリハビリの道中だ。 ◇ ◇ ◇ 健大高崎・佐藤は人の顔を覚えるのが得意だ。中学時代に全国屈指のマンモス校で磨いた目はだてじゃない。だから、誰にそう言われたかもなんとなく覚えている。「あの投げ方じゃ、ケガするよね」。そんなこと、自分が一番知っていた。「スライダーで肘に負荷がかかるのが原因でもあったので」。インステップからの強烈なスライダーで上級生をきりきり舞いさせ、昨年2年生ながらセンバツ優勝投手になった。左肘痛はその後、顕著になる。チームを夏の群馬大会Vに導くのが限界だった。 「実家に帰ってテレビで甲子園を見て、そこにいたはずの自分がいなくて」。悔しさを振り切り、8月30日にトミー・ジョン手術を受けた。プロでも1軍復帰まで1年半はかかることが多い。高校生なら当然、最後の夏から逆算する。その答えが現実だ。でも「高卒でプロに行きたい。それも早めの手術を決断した理由の1つです」。 長く活躍したい。繰り返せない。体を変えた。甲子園Vの春から12キロ増量し、現在は体重80キロ。年末の沖縄・石垣島キャンプでは「暑くて汗かけます。体重増えたのでちょうどいいです」としっかり走り込んだ。 150キロ台中盤を誇るチームメートの石垣元気投手(2年)は、球速依存から脱皮中。佐藤もスライダー投手から卒業する。「別人のようなスタイルを」と、同じ左腕のカブス今永を到達地に見据える。実は右投げでも遠投80メートル。投げたい思いを封印して右手にグラブをはめる。 「あの投げ方じゃ…」を華麗に聞き流し、17歳の胸にしみいったのは「早く投げてる姿を見たい、って仲間たちや家族が言ってくれて。未来を見てくれる言葉が本当にうれしかったです」。明るい未来を信じてくれた顔は、絶対に忘れない。【金子真仁】