東京・足立区の給食が“おいしい” 地元野菜使用、レシピがベストセラーに
小学校の残菜率は3分の1に減少
足立区の“おいしい給食”プロジェクトは、給食の時間だけにとどまりません。体験を通じて“食”の理解を深めるべく、中学生が新潟県魚沼市に田植えや収穫の手伝いに行く体験授業を実施したり、小学校5年生が幼稚園や保育園で来年入学してくる年長クラスの子供たちの食事の面倒を見たりする交流も行なわれています。 こうした取り組みが実を結び、小中学生の食に対する意識にも変化が出てきました。給食の残菜率は小学校が9.0%(2008年度)から3.1%(2014年度)、中学校は14.0%から7.1%へと減少しています。 さまざまな取り組みによって“おいしい給食”を実現している足立区には、全国から視察が相次ぎました。また、足立区の給食が話題になり、全国の保護者からレシピを知りたいという要望が寄せられたことから、2011年7月にレシピ集『日本一おいしい給食を目指している 東京・足立区の給食室』が発売されています。同書は、8万部のベストセラーになっています。
子供が好きなメニュー偏重に
残菜率を減らすことに成功した足立区ですが、課題はまだあります。残菜を減らそうとすると、どうしても児童・生徒の好きなメニューになりやすくなってしまうことです。メニューが偏ると、栄養のバランス面でも心配が出てきます。また、残菜率にこだわるあまり、食べすぎになってしまい児童や生徒の肥満率が高くなってしまう懸念もあります。 「実は足立区民の平均寿命は東京都の平均と比べても2歳短いというデータがあります。さらに、糖尿病患者数も23区ワーストでした。足立区は区民の健康についても施策を講じなければならないのですが、学校給食改革はそれらを改善する第一歩でもあります。学校給食を通じて家庭への食意識の啓発を図り、区民の生活習慣病を予防することも“おいしい給食”の目的のひとつです」(同) 飽食の時代といわれる昨今ですが、食を疎かにして健康的な生活をすることはできません。“おいしい給食”は、子供のみならず大人にも大きな影響を及ぼす政策といえるでしょう。 (小川裕夫=フリーランスライター)