大阪の初春を彩る大輪の花、坂東玉三郎が松竹座で舞踊公演 1月は仁左衛門と共演も
歌舞伎界最高峰の女形、坂東玉三郎。日本だけでなく、海外の芸術家にもインスピレーションを与える至高の美と芸は人々を魅了してやまない。1月から大阪松竹座(大阪市中央区)に登場、3~8日は「初春お年玉公演」と題して舞踊二題を披露する。11~26日は半世紀に及ぶ名コンビ、片岡仁左衛門との共演で芝居と舞踊を上演、大阪の正月に大輪の花が咲く。 玉三郎が松竹座の正月公演を担うのは5年連続となる。前半の舞踊公演では珍しい演目が並ぶ。「残月」は玉三郎が大切に舞い続けている地唄舞の一つで、「曲の良さに引かれました」という。 見え隠れする月の情景に、早世した女性の命のはかなさを重ね合わせた曲で、玉三郎は「昔亡くなってしまった若い女性がよみがえって、しばし2人で楽しい時間が過ぎていく。でも、また月が出たときに、やっぱり女性はいなかった、という振り付けにしています」と話す。 地唄舞は上方がルーツで、玉三郎は30年ほど前から「雪」をはじめ、「由縁の月」「鐘ヶ岬」などを手がけてきた。 「地唄舞は15分くらいで世界が完結します。見てくださる方の中には、先に逝かれた人を思う方もいるかもしれない。月夜を見たときのさまざまな思いを一瞬でも感じていただければ」 もう一曲は「長崎十二景」。竹久夢二の絵をもとにした舞踊劇で、昭和54年に玉三郎によって初演された。 「長崎の遊女が外国の男性と出会って別れていく、ただそれだけの物語です。夢二が描いた十二景の絵に合うシーンを作って、化粧や衣装も夢二の絵のイメージにしています。夢二の絵が動いているように見えればいいのですけれども」 11日からの「片岡仁左衛門 坂東玉三郎初春特別公演」で上演する四世鶴屋南北・作「於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)」と舞踊「神田祭」。「於染久松-」は2人がコンビを組むきっかけになった演目だ。 お染の7役早替わりなどケレンたっぷりの芝居だが、2人の共演では平成30年から、鬼門の喜兵衛(仁左衛門)と土手のお六(玉三郎)の夫婦に焦点を絞って上演している。お家騒動を背景に、死人を使って大金をゆすろうと思いついた2人。目的は同じだが、思惑はすれ違っていて-歌舞伎の悪の魅力に存分に浸ることができる。 玉三郎ふんするお六は歌舞伎の女形の「悪婆(あくば)」という役どころで、ほれた男のためなら殺しやゆすりもいとわない、あだっぽい大人の女をいう。