熱海土石流起点の残存盛り土に30m亀裂 11月上旬の大雨影響か 静岡県「問題ない」とするも根拠示さず
2021年7月に盛り土が崩落して28人が死亡した熱海市伊豆山の大規模土石流の起点で、落ち残った盛り土に幅30メートルにわたって新たな亀裂が生じていることが20日までに分かった。11月上旬の大雨による影響とみられる。現地調査した県は亀裂箇所の安定性について科学的根拠を示していないが、「崩れても(下流側の)砂防ダムの容量にほとんど影響を及ぼさないため問題ない」としている。 起点部では9月以降、斜面の再崩落が他に3カ所確認されている。土石流起点の逢初川源頭部の谷には、県の行政代執行で取り除かなかった盛り土が1万立方メートル以上残されている。 本社記者が現地で確認したところ、亀裂は落ち残った盛り土の右岸から中央部にかけての急斜面に見られ、盛り土を横断する方向に走っていた。県によると、亀裂の上下には高さ約30センチの段差ができていた。2日に連続雨量107ミリの雨が降り、3日に亀裂を確認したという。県盛土対策課は「地表を流れた雨水が表流水として盛り土に浸透し、浸透した重さで亀裂が発生した」と説明している。 県は21年土石流時に同じ谷の地盤から湧いた1日当たり1万2500トン(小学校プール33個分)の大量湧水によって盛り土が崩れたと主張しているが、今回亀裂が生じた付近で地質を調べるボーリング調査はしておらず、地下の状況は分かっていない。県担当者は「亀裂部分が崩れても小規模だ」とし、下流の集落までに土石流対策の砂防ダムが2基設置されていることから「ダムより下流に危険は及ばない」と強調した。 ■21年土石流前も亀裂や小崩落 2021年7月の大規模土石流を巡っては、発生前から巨大盛り土に亀裂や小規模崩落が生じていたが長年放置されていた。豪雨で盛り土から流出した大量の土砂は逢初川下流域を襲って住民28人が死亡する大惨事に至った。県は砂防法に基づく土石流対策を講じていなかった。 公文書に掲載された12年5月の現地調査時の写真には、巨大盛り土に亀裂や小規模崩落が見られ、他の文書にも小崩落が記録されていた。当時、下流側に砂防ダムは1基しかなく、ダム容量は巨大盛り土の10分の1程度。上流域の不安定土砂の一部が除去されて、2基目の砂防ダムが下流側に新設されたのは土石流発生後だった。
静岡新聞社