NASAの次の有人月面探査車はどれになる? 3つの最終候補を比べてみた 1年後に決定
3社の特徴を比べてみた
3社の探査車は基本的な機能は似ているが、その設計精神には違いがある。最終選考が終わっていないため詳しい情報は公開されていないものの、いくつかの興味深い特徴が明らかにされている。 ルナー・アウトポストがロッキード・マーティン、ゼネラル・モータース、グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー、MDAスペース社と共同で開発しているのは、いわば「最先端の運搬車」だと、サイルス氏は言う。「要は、宇宙トラックです。月面で大規模なインフラを建造し、維持することを目的としています」 高度なバッテリー技術によって、極寒の月の夜にも、宇宙飛行士がいてもいなくても探査車を動かせるという。また、一連のロボットアームが装備され、細かい建設作業や荷物の運搬をこなせるという。 同社の主力機は、民間企業やほかの宇宙機関が近く予定している月探査に送られることが既に決まっている。これが、アルテミス契約に向けた開発競争の屋台骨になればと、サイルス氏は期待を寄せる。 インテュイティブ・マシーンズは2024年2月、(多少のハプニングはあったものの)月の南極に着陸船「オデュッセウス」を着陸させた企業として知られている。米国が月面に宇宙船を送り込んだのは、1972年以来これが初めてだ。その貴重な実績と、パートナー企業(AVL、ボーイング、ミシュラン、ノースロップ・グラマンなど)との提携を活用して、「ムーンレーサー」と名付けた月面探査車を開発している。 「月で再利用可能な自律型有人探査車」という意味を持つムーンレーサーは、その名の通り、レースカーのような見た目で、操縦する宇宙飛行士を中心とした設計になっている。「ボーイングは、元になる月面探査車を作った企業でもあります」と、マグラス氏は言う。柔軟性が高いモジュール式で、人間または機械が自分で部品を簡単に交換できるという。 一方アストロラボは、アクシオム・スペース社とオデュッセイ・スペース・リサーチ社と共同で月面探査車「フレックス」を開発している。洗練されたコンパクトなバギー車のような見た目で、モジュール式の構造は「これまでに建造された探査車のなかでも最も汎用性が高い設計になっています」と、マシューズ氏は言う。既に、地上実証のためのプロトタイプを完成させており、顧客の機械や実験装置、その他の荷物計1.5トンを積んで、スペースX社の宇宙船「スターシップ」で月に運ばれることになっている。「その中核をなしているプラットフォーム設計が、NASAの探査車でも設計の基礎になっています」