FIA、アゼルバイジャンで注目を浴びたマクラーレンの”ミニDRS”への対処について検討
F1アゼルバイジャンGPで優勝し、コンストラクターズランキング首位に躍り出たマクラーレン。しかし同チームには、ある疑惑が持ち上がっている。それがミニDRSとも呼ばれる、フレキシブル・リヤウイングだ。 【動画】残り2周でまさかの展開! 表彰台争うサインツJr.とペレスが大クラッシュ|F1アゼルバイジャンGP FIAはこのリヤウイングについて、対策を講じる必要があるか、検討しているという。 このマクラーレンのリヤウイングの挙動は、後方を向いたオンボードカメラ映像によって明らかになった。リヤウイングのフラップが、高速走行時に後方に向かって倒れるように曲がり、それによりメインプレーンとの間に隙間が空くように設計されているように見えた。 この効果により空気抵抗が減少し、最高速が上がることになる。そのため”ミニDRS”というニックネームが付けられた。 このリヤウイングにはライバルチームも注目。リヤウイングの柔軟性に関して何が許され、何が許されないのかを明確にするよう声が上がった。 今週末のシンガポールGPを前にFIAは、バクーで収集した証拠を検討し、何らかの措置を講じる必要があるかどうかを検討していることを明らかにした。 FIAは次のような声明を発表している。 「FIAは全てのマシンのボディワークの柔軟性を綿密に監視しており、シーズン中にはいつでもチームに修正を要求する権利を留保している」 「ただしチームが全てのたわみテストに合格し、レギュレーションと技術指令に 遵守している場合は、完全に準拠していると見做され、それ以上の措置が講じられることはない」 「FIAは現在、バクーでのグランプリで得られたデータと追加の証拠を検討しており、今後に向けた緩和策を検討している」 「これは技術的な合法性を精査する際の標準的なプロセスの一部であり、FIAは必要に応じてシーズン中にレギュレーション変更を行なう権限を有している」 マクラーレンのリヤウイングは、必須とされているたわみテストには合格しており、レギュレーションに準拠していることに疑問の余地はない。しかし、ウイングをこのように意図的にたわむように設計することが、FIAのガイドラインに反するのではないかという議論がなされているわけだ。 FIAの現在も有効な技術指令(TD34)では、ウイングのたわみに関するガイドラインが提示されている。つまり車検で合法とされても、特定の動きは許されないことが明確にされているわけだ。 この技術指令では、次のような場合は合法とは見做されないと述べられている。 「二次パラメータによって構造特性が変更され、(コース走行中に)FIAの静止している時の車検の時とは異なるたわみ特性を生み出す設計。二次パラメータとは温度、空力負荷などが考えられる」 ライバルチームは、何が許容されるのかを明確にするよう求める中で、マクラーレンの開発を注視している。 あるチームの代表は、motorsport.comに次のように語った。 「空力によるたわみは、長年にわたって重要な要素である。たとえウイングがFIAの車検に合格したとしても、そのパーツが曲がるように設計してはならないというレギュレーションは非常に明確だ」 「我々はFIAが、その限界がどこなのかを判断したことを頼りにしている。もちろん、全てのパーツはある程度たわむが、何が許容され、何が許容されないのかが重要だ」 「再び極端な手段が利用され始めている。それが許容されるかどうか、その場合は全員が使うことができるのだろうか、それともレギュレーションの記述通りであり、それが遵守されるのか? それはFIAが決めることだと思う」 「現在、誰が何をしているかは大きくバラつきがある。バクーの後、マクラーレンのリヤウイングには多くの関心が寄せられており、パフォーマンスも期待できるはずだ。もちろん、パフォーマンスが上がる期待ができるモノだよ」 「だからこそ、誰もがそれを追い求めているんだ。しかし、何が合理的で、何が馬鹿げているのかを知ることはとても大事だ」 なお現時点ではマクラーレンのリヤウイングに注目が集まり、論争の中心となっているが、マクラーレン以外にも疑惑の目が向けられているチームもあるようだ。
Jonathan Noble