「過呼吸で大豆バーしか喉を通らない」仕事で精神的に追い詰められた女性を救った先輩の「ひと言」と芸人転身の大胆決断
── なぜいきなりそんな大胆なことを(笑)。 石井さん:芸人になると決めたものの、じつは小心者なので「会社の恥だから、マッキンゼー出身だと名乗ってくれるな!」と言われたらどうしようと。なんなら、闇の勢力に消されるんじゃないか、くらいに思いこんで。もちろんそんなものはないですよ(笑)。「すべての縁を絶って静かに消えるので、私のことはどうか忘れてください、さよなら」という別れの手紙のつもりでした。 ── そうなのですね。てっきり「やめてやる!」というファイティングポーズなのかと。
石井さん:いえいえ、そんなつもりはまったくなかったです。でも、たしかにちょっとやることが極端すぎましたね。もっと真面目な挨拶文を送るつもりだったのですが、「居場所はここだけじゃない」とアドバイスをくれた先輩にお笑い芸人に転身することを告げると、「芸人になろうという人が、これじゃつまらないでしょう」と言われて。同期の友だちが養成所の合格書を見て「これ添付すればいいじゃん!」と言い出し、そこから悪ノリが始まりました(笑)。仕事でいっぱいいっぱいのときには気づけませんでしたが、マッキンゼーはノリがよくておもしろい人が多かったです。
PROFILE 石井てる美さん いしい・てるみ。1983年、東京都生まれ。東京大学工学部から大学院へ進み、卒業後は、大手外資系コンサルティング会社「マッキンゼー・アンド・カンパニー」に入社。お笑い芸人を志し、2009年に退社。現在は、ワタナベエンターテインメント所属のお笑い芸人として活動中。 取材・文/西尾英子 写真提供/石井てる美
西尾英子