架空受注を隠蔽するために「闇取引」に手を染める…積水ハウスの地面師被害に隠された「負のスパイラル」
Netflixドラマで話題に火が点き、もはや国民的関心事となっている「地面師」。あの人気番組「金スマ(金曜日のスマイルたちへ)」や「アンビリ(奇跡体験!アンビリバボー)」でも地面師特集が放映され、講談社文庫『地面師』の著者である森功氏がゲスト出演した。同書はすべて事実を書いたノンフィクションであり、ネトフリドラマの主要な参考文献となっている。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 不動産のプロですらコロッと騙されるのだから、私たち一般人が地面師に目をつけられたらひとたまりもない。そのリスクを回避するためには、フィクションであるドラマよりも、地面師の実際の手口が詳細に書かれた森氏のノンフィクションを読むほうが参考になるだろう。 地面師たちはどうやって不動産を騙し取るのか。森功著『地面師』より、抜粋してお届けしよう。 『地面師』連載第69回 『信じていた社長まで「真っ赤なニセモノ!?…闇に葬り去られた「二重のなりすまし詐欺」の真相とは』より続く
電通ワークス事件
2010年代はじめ、電通の子会社「電通ワークス」が手掛けた発光ダイオード(LED)照明事業における詐欺事件が話題になったことがある。 もとはビル管理や人材派遣業を営んできた電通ワークスが節電ブームに着眼し、蛍光灯に代わり一本あたり一万円以上するLED電球を取り付ける事業を展開した。家庭用の電球ではなく、もっぱら大手ドラッグストアや著名な自動車部品量販店、都心の人気劇場などの大口取引を狙ったとされる。 もっとも電通の子会社にLED照明を売り込む営業ノウハウや製造技術があるわけではない。そこで、営業やLED製造元とのあいだをとりもつ代理店が介在した。電通側が代理店に巨額な製造コストを前払いし、LED事業を次々と受注していったとされる。 が、実はそんな代理店を通じたLED事業の大半が、売り上げを大きく見せかけるための架空取引だった。さらに架空受注を隠蔽するため、発注や受注を繰り返す循環取引に手を染めていたことが判明する。