「オレンジの吉野家」より「黒い吉野家」のほうが従業員の歩数が30%少ない…儲かる店舗の意外な秘密
■広いキッチンは歩数が増える キッチンが広いと、仲間との距離も保たれますし、移動するとき仲間の動きを気にする必要も減ります。ただ、広いキッチンは、歩数が増えます。 たとえばキッチンで、サラダの盛り付けをしたとします。きれいに見えるように丁寧に飾れれば、価値を付加したこと、つまり「付加価値」が生まれたことになります。 ソテーをするためにフライパンで調理すれば、生の食材を加工していますし、上手に焼ければさらに価値が付加されます。しかし、何かを取りに行くために歩いても、何の価値も付加されません。これは1円にもならない、ムダな労働です。 ■時間当りの売上アップにつながる また地方には、「段取り替え」という方法が浸透していない気がします。 段取り替えとは、時間帯によってキッチンのレイアウトを変更することです。 狭いキッチンの場合、トゥーオーダーの速度を高めようとすると、とにかく余分なものを目の前から除き、なるべく動かず単純作業を繰り返そうと考えます。逆に、仕込みのときは、やりやすいように機材や食材を並べて効率よくしたいと考えます。 そこで、仕込み時間には包丁、まな板、大きな機材を自分がやりやすいように移動して、トゥーオーダーが増える時間には、それらを除いてレイアウトを変更します。もちろん、トゥーオーダー用のレイアウトは、歩数が減るようにします。 こう考えると、台下冷蔵庫というのは、上下の動きですむようになっていますし、自分が調理しているとき目線より上にある食器棚も同じで、理にかなっているわけです。 この意識がつくと、トゥーオーダーの対応能力が高まる、つまり時間当りの売上を増やすことができます。 地方だと、「そんなに急がなくても」と思う社長も多いですが、ピークの対応能力が高まると、売上は自然に増えます。
■歩数までこだわる「黒い吉野家」 あなたの近くに、「黒い吉野家」は出店していますか? 黒い吉野家とは、「クッキング&コンフォート」という業態の吉野家のことで、看板が黒いことから、そう呼ばれています。おしゃれな外観でテーブル席が多く、ドリンクバーもあるので、郊外の家族連れを狙うタイプのお店です。 価格はオレンジの吉野家と同じですが、事前会計になっていて、牛丼はすぐに出るので自分で席まで運び、揚げ物などを頼むとブザーが鳴るベルを渡され、仕上がったら自分で取りに行くスタイルです。 お気づきのように、ホールの人件費をなくして価格を維持しています。儲かるモデルなので、郊外型、ロードサイド型の店舗を少しずつ「黒い吉野家」に変えているようです。 そこに興味を持っていたら、新聞の記事に目がとまりました。記事によると、この店舗はオレンジの吉野家と比べて従業員の歩数が30%ほど減ったそうです。数字にも驚きましたが、それを計っていることにも驚きました。 このように、大手も歩数に注目しています。あなたもキッチンを、営業時間中の歩数に注目して見直すと、対応能力が高まるかもしれません。 ■タッチパネルや券売機の導入はアリか 人時売上高をよくするために、タッチパネルや券売機を導入するという方法もあります。 タッチパネルは追加オーダーが多いお店、券売機はオーダーが一度だけのお店に向いています。 これらをすすめるとよく、「お客様との接触回数が多いほど、親近感を持ってくれたり仲良くなれるチャンスが増えるって聞いたことがあるんですけど?」といった質問を受けます。 たしかにご指摘のとおり、それが定説、基本です。 ただ、接触回数が多くても、お客に何も感じてもらえていない接客なら、機械化もありだと、私は考えています。