『虎に翼』約6分間の長尺で描かれた“原爆裁判”の判決 苦しむ声を無視しない寅子の姿勢
令和の時代にもリンクする“政治の貧困”という言葉
更年期の不調を抱えながら、認知症の百合(余貴美子)に向き合う寅子。百合は「朋彦さんのところに行きたい……」「情けない……」「ごめんなさい……」とひたすら謝りながら咽び泣く。苦しいという声を知らんぷりしたり、なかったことにする世の中にはしたくない。百合の背中を優しくさする寅子の姿勢は彼女の人生において一貫したものだが、それは今回の裁判の判決理由にも表れている。朝ドラを描く上での現代とのリンクはもはや必然とも言えるが、政治の貧困に関しては低迷する令和の今にも言えることである。 なお、厚生労働省が発表している広島市と長崎市に投下された原子爆弾によって被害を受けた被爆者の現在の数は、全国で11万8935人(令和4年3月31日時点)。原爆裁判の判決が出る前の昭和32年に「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律」が施行、被爆50周年にあたる平成7年に「被爆者援護法」が成立されるなど、数10回にわたる法令の改正を重ね、被爆者援護の拡大・拡充を繰り返し、保健、医療、福祉にわたる総合的な援護制度が実施されている。だが、その中には吉田のように深いケロイドによって見た目で差別を受ける人、もしくはそれ以上の傷を持ち今も苦しんでいる人がいることを忘れてはならない。 『あさイチ』(NHK総合)の「プレミアムトーク」にクランクアップを迎えた伊藤沙莉が登場し、いよいよ最終盤に突入している『虎に翼』。次週は最高裁長官に桂場(松山ケンイチ)が就任する一方で、多岐川(滝藤賢一)は病を患い、治療に専念していた。 参照 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/genbaku/index.html
渡辺彰浩