アラン・ドロン、ドナルド・サザーランドら、2024年に逝ける映画人たちを偲んで
シェリー・デュヴァル
7月11日、75歳没。彼女もまたロバート・アルトマン作品をきっかけに、70年代アメリカを代表する女優となった。デビュー作『BIRD★SHT』(1970年)以降、その個性的なキャラクターが重宝され、『ボウイ&キーチ』(1974年)『ナッシュビル』(1975年)『三人の女』(1977年)などに出演。人気カートゥーンの実写化『ポパイ』(1980年)ではヒロインのオリーブ・オイルを驚きの再現度で演じてみせた。もちろん、スタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』(1980年)で見せた迫真の熱演も忘れがたい。殺人鬼と化した夫(ジャック・ニコルソン)と戦う羽目になる妻デュヴァルの崩壊寸前の表情こそ、最もホラーだった。 2002年には俳優業から引退。精神疾患と闘っている状況も伝えられたが、コロナ禍発生後の2021年には『The Hollywood Reporter』の取材に応え、気さくなインタビューと柔和な笑顔でファンを安心させてくれた。生まれ故郷のテキサスが、彼女の終の棲家ともなった。
ロジャー・コーマン
5月9日、98歳没。言わずと知れたアメリカを代表する独立系映画プロデューサー。『私はいかにハリウッドで100本の映画を作り、しかも10セントも損しなかったか』という自伝本のタイトルからわかるとおり、低予算のジャンル映画を数多く世に放ち、 B級映画の帝王として観客の下世話なニーズに応えてきた。一方、大資本に支配されたメジャースタジオとは異なる自由な制作体制を貫き、若いスタッフや俳優を育て上げた功績はあまりにも大きい。門下生はフランシス・フォード・コッポラ、ジョー・ダンテ、ジョナサン・デミ、ロン・ハワードなど錚々たる顔ぶれ。監督としても『金星人地球を征服』(1956年)『黒猫の怨霊』(1962年)など、味のある名品をいくつも手がけた。 とにかく衰え知らずの精力的活動で知られ、2017年にも『Piranha in Japan』制作発表会見のために90歳で来日。「絶対に死なない人代表」のように思い込んでいたので、訃報のショックもひとしおだった。サイボーグ化技術がもっと進歩していたら……と思わずにいられない。