日本と韓国は「#MeToo」運動でどう変わった? 女性の権利が向上、一方で激しい「バックラッシュ」も
韓国での状況について、韓国女性政策研究院の副研究委員、金源貞は「性暴力やハラスメントの問題に対する社会の認識は大きく変化した」と評価する一方、男女で賃金や昇進が異なるといった不平等の問題は「非正規労働者や中小企業の直面する格差ほどの注目を集めず、改善の動きが鈍い」と指摘する。 また、大統領の尹錫悦による保守政権下では、女性政策の研究や推進が「非常に難しい時期になっている」と言う。 韓国の動きは、日本から見てどう映るのか。 伊藤詩織と行動を共にしてきたフォトジャーナリストの安田菜津紀は「反動もあるが、社会に進歩する力があることも示されている。声を上げることの意義が広く理解されていない日本社会と、土台の違いを感じる」と話す。 女性と男性が対等な社会を築くことは、人権の問題でもある。その価値観を、どう共有していくか。安田は、こう言葉を続けた。「投げられたボールを受け止め、解決していくことは社会の責任だ」
▽日本は「アップデート正念場」 「#MeToo運動」後の日韓社会についてどう見るか。両国のフェミニズムに詳しいお茶の水大の申琪栄教授に聞いた。 「#MeToo運動が広まるきっかけとなった性被害の告発について、社会の受け止めに、日本と韓国では大きな違いがあった。日本では伊藤詩織さんの告発に対し、メディアを中心に、当初は真剣に捉えていなかった。一方、韓国では女性検事の告発は大きく報道され、一気に反響と女性検事への支持が広がった。 この背景にあるのは、社会的な不正に対する意識の違いだ。韓国では民主化運動の経験もあり、権力を持つ者の不正に人々があらがうことは肯定的に受け入れられている。しかし、日本では社会が共有している抵抗のストーリーが薄い。 伊藤さんの問題は海外でも報道されたことで広く知られるようになった。その後、性被害に対する社会の認識は変わっていったが、旧ジャニーズ事務所の性加害問題は、巨大組織の中にハラスメントが常態化していた実態を露呈した。これを機に社会がアップデートできるか、日本は正念場にあると言える。