北海道新幹線、難航する「トンネル工事」の実態 軟弱地盤や巨大岩出現、地質に工法が合わない
JRTTに問い合わせたところ、「4月に岩盤に当たったときからこの岩盤の存在を想定していた」としたうえで、「撤去用の機材は残しておいた」という。同じく地上から掘った穴をから岩を砕く工法で岩塊を取り出す。そのため、「この撤去作業があっても全体のスケジュールに変更はない」。 とはいっても、このように次々と岩盤が出現すると、ルート上に弾性波探査では発見されなかった岩塊が存在するかもしれないという懸念は付きまとう。
弾性波探査をもっときめ細かく、たとえば数m間隔で行えば地盤の状況がずっと正確にわかるはずだが、それには「コストも時間もかかる」(JRTT)。渡島トンネルとは逆に、掘削の方法をSENSではなく硬い地盤に適したNATMに変更すれば問題なく掘削が可能となるが、やはりそこまでは考えていないという。 ■見通せない工事の行方 報道陣からは、こうした状況を踏まえて開業時期はいつになるのかという質問が相次いだ。たとえば、渡島トンネルであれば、掘進が順調に進んだ場合の工事ペースはわかっており、現在の地質の不良区間をゆっくりと掘進する場合の工事ペースもわかっている。あとは、地質不良区間が何mあるかさえわかれば、ある程度の推定は可能だ。
しかし、国交省の担当者は、「会議でそうした話はあったが、今後の見通しにも関わってくることなので申し上げられない」と答えた。 このように土木工事の状況に不透明な部分が多いのでは、開業時期を示すのは簡単ではないだろう。駅周辺のインフラ整備を進める観点から、地元関係者の間では開業時期を決めてほしいという声が上がっている。それは確かにもっともなのだが、不確定要素が多い中で開業時期を示しても、信頼できる数字でなければ、かえって状況を混乱させることにもなりかねない。
ここは、ぐっとこらえて有識者会議が適切な結論を見出せるよう、議論の推移を見守るべきではないだろうか。
大坂 直樹 :東洋経済 記者