北海道新幹線、難航する「トンネル工事」の実態 軟弱地盤や巨大岩出現、地質に工法が合わない
軟弱地盤であればシールドマシンによる工法に転換したほうがいいではないか、とJRTTの担当者に尋ねたところ、「現時点では転換までは検討していない」とのことだった。シールドマシンを使うとなると、機械の組み立てに年単位の時間がかかる。しかも巨額の追加費用が発生する。現在は「NATMで少しでも合理的、効率的な工事ができるような方法を探っている段階」という。 ■再び岩塊が掘削阻む「羊蹄トンネル」 長万部駅と倶知安駅の間に設けられる羊蹄トンネル(全長9.7km)は倶知安方から掘進中の比羅夫工区(5.5km)と新函館北斗方から掘進中の有島工区(4.1km)からなり、どちらもSENS工法で工事が進められている。
SENSとは円筒形のシールドマシンを使って掘削を行い、掘削が終わると同時にコンクリートでトンネル内面を覆う工法。硬い地盤を掘り進むNATM工法と軟弱地盤を掘り進むシールド工法の中間と考えればわかりやすい。しかし2021年7月、比羅夫工区で10mを超える巨大な岩塊が出現し、掘削がストップした。 硬い岩塊を掘削するとシールドマシンの刃が破損する危険がある。ルート上にこうした岩塊がほかにもあるか事前に調べる必要がある。そこで、地上から電磁波や、地盤打撃時に発生する弾性波を用いて地質を探査したところ、比羅夫工区と有島工区ルート上には9カ所で掘進に影響する可能性がある岩塊の存在が確認された。ただ、その後に9カ所を詳細に調査したところ、撤去が必要な岩盤は3カ所で、残り6カ所は「掘進が不可能というほどではない」という。
工事を妨げた巨大岩塊については、シールド機の後ろから岩盤に向かって迂回する小断面のトンネルをNATM工法で掘削し、到達後に岩塊を細かく砕いて2023年3月に迂回トンネルから除去した。その後は迂回トンネル埋め戻しなどの整備を終え、2023年11月、2年4カ月ぶりに掘削を再開した。比羅夫工区の11月時点の掘削進捗率は69%。2019年4月に着工を開始し、2024年8月の完成を目指していた。 有島工区の工期は2025年3月で、11月時点の進捗率は59%だが、今年4月にシールドマシンが約2mの岩塊が出現して停止した。掘削箇所が地表から15mしかないこともあり、地上から掘削して岩を砕いて取り除くこととした。岩塊の撤去が完了し、11月18日、7カ月ぶりに掘削を再開したが、翌19日に1m程度の大きさの新たな岩塊が出現し、またもや掘削を停止してしまった。