40代・50代女性に多い「子宮腺筋症」になりやすい人の特徴は?医師が解説
40代から50代以降の出産経験のある人に多くみられる子宮腺筋症。その症状とは?子宮内膜症との違いは?月経トラブルなどを抱えている人は注意が必要かもしれません。医師が解説します。 〈写真〉40代・50代女性に多い「子宮腺筋症」になりやすい人の特徴は? ■子宮腺筋症とは、どのような病気なのか? 子宮腺筋症とは、子宮内膜に似た組織が子宮の筋肉の中にできる病気を指していて、子宮内膜に類似した組織が子宮平滑筋組織の中に出来る疾患です。 子宮腺筋症は、不妊や流産、早産の原因になることもありますし、主に、月経痛や月経血量の過多などの症状を来します。 エストロゲンという女性ホルモンが子宮腺筋症を進展・増悪させますので、月経が有る限り、子宮腺筋症は進行していき、子宮筋層が肥厚していきます。 子宮全体に腺筋症病変が有る場合は、子宮筋層全体が肥厚することで、子宮全体が著明に肥大することもありますし、しばしば子宮筋腫や子宮内膜の肥厚を合併します。 そもそも、子宮のほとんどは子宮筋層と呼ばれる筋肉でできていて、その内側は子宮内膜という粘膜組織で覆われ、子宮内膜は受精卵を育むベッドとしての役割を担っています。 子宮内膜に関連する病気として子宮内膜症がよく知られています。 子宮内膜症は子宮内膜あるいはそれに似た組織が子宮の外に発生する病気ですが、子宮内膜は子宮の外だけでなく、子宮を構成する子宮筋層内に生じることもあり、これを子宮腺筋症と呼んでいます。 子宮腺筋症は、主に40~50歳代の人に多く、特に出産を経験した人に多いといわれています。 子宮腺筋症では、多くの場合で月経困難症(強い月経痛)や過多月経(経血量が多い)、不正出血、月経時以外の腹痛・腰痛などを自覚します。 一般的には、子宮腺筋症では女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの影響を受けるため、閉経を迎えるまで症状は進行し続けますが、閉経を迎えると軽快します。 子宮腺筋症のそれぞれの症状に応じて、鎮痛剤、鎮痙剤、止血剤で対応します。 それでも不十分な場合などは、様々なホルモン剤による薬物療法が行われますし、万が一これらの治療法が無効の場合は、子宮内膜焼灼術や子宮全摘術が考慮されます。 ■「子宮腺筋症」になりやすい人の特徴 子宮腺筋症の原因はまだよく分かっていませんが、発生のメカニズムとしては、何らかの原因によって子宮内膜が子宮筋層内に潜り込んでしまうという説があります。 また、子宮内膜症と同じように発生するという説、もともと子宮筋層内にあった子宮内膜から発生する説があり、子宮内膜が、何らかの要因によって子宮筋層に入り込んでしまうことが原因であると考えられています。 また、子宮内膜掻把術、帝王切開術、子宮筋腫の手術など、子宮内膜の操作を伴う手術を受けた方々に見られやすいという考え方もあります。 手術で摘出された子宮を顕微鏡による検査(病理検査)で詳しく調べると、20~60%程度に認められるとされています。 子宮腺筋症は、40歳代に一番多くみられ、経産婦に多いとされています。その他、50歳代であり、掻爬手術、帝王切開、筋腫の手術など子宮内膜の操作を伴う子宮手術を経験した人に多く認められると考えられています。 子宮腺筋症は、基本的には母子間で遺伝はしないと考えられています。 ■まとめ 子宮腺筋症は、主に40代から50代以降の出産経験のある人に多くみられる病気です。 子宮腺筋症は、女性ホルモンの一つであるエストロゲンに依存して進展・増悪していくので、月経が有る間は、病変部は悪化していきますし、症状が改善することは通常ありませんが、女性ホルモンの分泌が減少して閉経する頃を境に、症状は治まります。 心配であれば、産婦人科など専門医療機関を受診しましょう。 今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。 文/甲斐沼孟(医師)
甲斐沼 孟