「怒らない大会」をはじめて9年 益子直美が目指す幸せなスポーツの形
■監督からの反発も「参加チームは増えるいっぽう」 ── 監督さんたちから、反発はなかったですか? 益子さん:最初はありました。監督が怒ったら私が注意しに行くのがお約束。「いま、怒りましたね~?」と言ったら、「いや、怒ってないし!」と逆ギレされることも。だから、2年目はどのチームも出てくれないかもしれないなと思っていたのですが、なんと1回目よりもチーム数も増えて、最終的には50以上のチームが参加してくれました。子どもたちから「楽しかったから、また出たい!」という声がたくさん上がっていたのだそうです。
じつは最初の3年くらいは、このルールがバレるのがイヤで、大会のことを発信しませんでした。協会や監督たちから、「なにバカなことやってるんだ」と叩かれると思ったんです。実際にSNSで、関西のある監督さんから「そんなことをされると、怒れなくなるじゃないか!」と苦情がきたこともありました。 ── 「監督が怒らない」をルールにしたことで、子どもたちの反応はいかがでしたか? 益子さん:試合中の表情がイキイキとして、すごく明るくなりました。監督さんたちのなかには、ハイタッチやガッツポーズをしたことがなくて、ダメ出しをするだけの人も多かったんです。「監督がハイタッチなんてやったら、なめられる!」と身構えていて。ですから、「ハイタッチにチャレンジしましょう」と提案し、子どもたちには、「サーブポイントをとったらベンチまで戻って来てね」と伝えました。
すると、不思議なことに、みんなどんどんサーブポイントを取るようになり、跳ねるようにベンチに戻ってきて、嬉しそうにハイタッチをしていました。試合後、「何が一番楽しかった?」と聞いたら、「監督とハイタッチした~!」とか「監督が笑顔で喜んでいて嬉しかった!」と。なかには、「大人たちが楽しそうでよかった」という子もいましたね。
■「怒らない」よさに気づき始めた一方で大きな課題も… ──「大人たちが楽しそうでよかった」なんて、なんだかせつなくなります。