「やるしかない」 能登半島地震のビル倒壊で妻子亡くした居酒屋店主 「輪島に戻りたい」神奈川での再スタートで強くした思い
能登半島地震で隣のビルが倒壊し居酒屋が押しつぶされ、建物の中にいた妻と長女を亡くした男性は、最愛の家族を失った悲しみを胸に、10日神奈川県川崎市で店の営業を再開しました。 【写真を見る】「やるしかない」 能登半島地震のビル倒壊で妻子亡くした居酒屋店主 「輪島に戻りたい」神奈川での再スタートで強くした思い 「やるしかない」決意の再出発です。 多くのお客さんが祝う中、川崎市で居酒屋をオープンさせた楠健二さん。 楠さんは、石川県輪島市河井町で2018年から妻・由香利さんと居酒屋「わじまんま」を営んでいました。 元日の地震で、河井町では7階建てのビルが倒壊しましたが、わじまんまはその隣でした。店は倒壊したビルの下敷きになりました。 由香利さんと長女・珠蘭(じゅら)さんはがれきに体を挟まれ、救出活動は思うようにはかどりませんでした。 楠健二さん(1月)「自分の娘と大好きな女房がいるのに出せない。そんな悲しいことないと思うよ多分。俺は耐えられない」 楠さんは1月の下旬から、何度も押しつぶされた店を訪れ「大切な物」を探しました。沢山の写真が残されている妻や長女のスマートフォンや去年、妻からプレゼントされた腕時計。 楠健二さん「それを探してたからこんな早く見つかると思わなかったから、見つかってよかった。小さい頃の写真とかもみんな入っているから」 4月、楠さんは川崎市で洋食店の居抜き物件を購入し自らの手で改装しました。川崎市は輪島市に移住する2018年まで、家族で暮らしていた場所です。 楠健二さん「輪島の復興復旧がいつになるか分からないじゃん。明日になるんだったら明日戻るけど、何年単位のものじゃん。それまで働かないでいられる財力もないしさ、じゃあやるしかない。やるしかないんだよ「やりたい」じゃなくて「やるしかない」 店内には、ポスターや能登の祭りを象徴するキリコのレプリカ、食器の中にはがれきから運びだしたものも。 店の名前は輪島市の店と同じ「わじまんま」です。しかし、これまで当たり前だった家族と一緒に切り盛りする様子は店内にありません。 楠健二さん「今までいたものがいない状況でオープンする訳じゃん。ただどっか行って休みなら別だけどさ。一生、ずっと1人でやんなきゃいけないじゃん。当然アルバイトとか娘と息子は助けてくれるけども、娘たちがホールに出て客相手にして奥で女房が揚げ物でも焼き物でも作って、それでああ忙しかったねってゲラゲラ笑っておわったんだけどね。とにかく賑やかな家族だったから…」