新薬候補の「大型導出」迫るペルセウス、何がすごいのか
ペルセウスプロテオミクスの横川社長は、記者のインタビューに対し1時間半にわたって語った(撮影:梅谷秀司)
2021年に東証グロース市場に上場したペルセウスプロテオミクス(4882)は、独自の抗体技術を駆使した新しい抗体医薬品の開発を目指す創薬ベンチャーだ。パイプライン(開発候補品)のうち、赤血球が過剰に生産される病気である真性多血症向けの新しい治療法として期待される「PPMX-T003」が、今年6月に治験1相を終える予定で、2025年3月期中の導出(ほかの製薬会社へのライセンスアウト)へ準備を進めている。抗体と放射性医薬品を結びつけたRIT(放射免疫療法)で、固形がんの新薬として開発を進める「PPMX-T002」は、2022年3月に富士フイルムへの実施許諾契約が解約となったが、自社での開発を進め、再び導出を目指している。「PPMX-T004」は同じく固形がんの新薬として開発を目指しているADC(抗体薬物複合体)で、第一三共(4568)が乳がん向け「エンハーツ」を実用化し、創薬業界でホットテーマになっている領域だ。大型導出を間近に控えて、株価も動意づいた。2023年11月には上場直後以来となる戻り高値879円をつけ、わずか3カ月間で時価総額が3.5倍となる盛り上がりを見せた。2つのパイプラインの導出について、その確度や規模感はどの程度なのか。導出後の事業展開をどう考えるのか。横川拓哉社長を直撃した。──昨年は株価が急騰しました。市場は真性多血症向け「PPMX-T003」の導出に注目しています。 そうだと思う。「PPMX-T003」の導出は、当社にとっていちばん近い目標だ。 治験1相(新薬候補の主に安全性を検証する、最初の臨床試験)が終われば、導出活動に入る。 もう少し早く治験1相が終わればと思い描いていたが、2月2日に、治験1相の終了予定時期を今年3月末から6月へと延伸した。ただ、新薬の開発において想定外のことが起きるのはよくあること。思ってもいない毒性が出るなどして開発が頓挫することもある中、大きな目で見れば、順調に進捗している。 ──治験1相の結果が出てから、製薬会社へ導出するのですね。 こんにち、創薬ベンチャーが開発するパイプラインは山のようにある。治験1相を完了していないものは、(製薬会社の)評価の順番がなかなか回ってこない。製薬会社も「1相が終わってから考えます」と。 ただ、今回の治験はオープン試験でやっているので、データ解析にはそれほど時間がかからない。治験結果は割と早くわかると思う。 ──2023年11月に発表した中間決算の説明資料11ページに、真性多血症(PV)向けの新薬候補における、他社の契約事例が掲載されています。資料によると、契約一時金は15億~26億円、開発マイルストーンは前臨床段階のもので191億円、治験1相段階のもので606億円です。「PPMX-T003」も同じ規模を期待していいのでしょうか。
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佐々木 亮祐