インドネシア中銀、金利据え置き 米選挙踏まえ通貨安定に重点
[ジャカルタ 20日 ロイター] - インドネシア中央銀行は20日、政策金利の7日物リバースレポ金利を6.00%に据え置いた。トランプ前大統領の返り咲きとなった米大統領選挙をきっかけに世界を取り巻く情勢が変貌し、通貨ルピアの安定に重点を置く必要があるとの見解を示した。これにより12月利下げ観測が後退した。 翌日物預金ファシリティー金利(FASBI)と貸出ファシリティー金利もそれぞれ5.25%、6.75%に据え置いた。 据え置き決定は予想通り。 ペリー・ワルジヨ中銀総裁は、前回の政策見直しから1カ月の間に世界の力学が変化し、経済、地政学、貿易の分断リスクが全て高まったと指摘。トランプ次期米政権で、米国の政策がより内向きとなる可能性があり、拡張的な財政政策はFRBの緩和サイクルを制限し、世界のインフレ率に影響を与える可能性があると述べた。 「米国の政治動向に起因する地政学や世界経済の不確実性の高まりに対しルピアの安定を強化することに金融政策の重点を置いている」とした。 最近のルピア安については、米大統領選挙後のドル高とドル資産への資本逃避が原因だが、それは管理可能で、ルピア安定に向けあらゆる措置を講じる方針を示した。 第3・四半期の国内総生産(GDP)は前年比4.95%増で、プラボウォ大統領が目指す8%を大きく下回った。 インフレ率は昨年半ばから中銀の目標レンジ(1.5─3.5%)内とどまっている。10月は1.71%だった。 中銀は今年の成長率予測を4.7─5.5%に維持し、25年は改善を予想した。インフレ率は25年末まで目標レンジ内にとどまるとみている。 <目先の利下げ期待が後退> インドネシア中銀は、米連邦準備理事会(FRB)の利下げサイクル開始直前の9月に0.25%利下げした。 今回、中銀が米大統領選後の情勢を踏まえ通貨安定を重視する姿勢を示したことで、早期利下げ観測が後退している。 三井住友銀行のエコノミスト、阿部良太氏は「予想通り中銀の最優先事項はルピアの維持だった」と述べた上で、12月会合での利下げ検討は困難との見方を示した。経済がすでに鈍化する中、金利の高止まりは経済を圧迫すると予想した。 DBS銀行のシニアエコノミスト、ラディカ・ラオ氏は、インフレ見通しを踏まえると利下げの余地はあるものの、世界的な不確実性から金融の安定に注力せざるを得ないと中銀が示唆したと指摘。「中銀は今後も過度なルピア安を阻止する介入戦略のもと、打てる措置を実施するとともにルピア安定に向けた金利政策を強化するだろう。今四半期の追加利下げの可能性は後退している」と述べた。 ただ、中銀は早めに利下げに踏み切るべきとの声もある。 バンク・ダナモンのエコノミスト、ホシアンナ・シツモラング氏は、国内成長見通しが悪化する中、さまざまな問題を管理し、成長を支援し、消費者信頼感を回復させるためには時宜を得た利下げが不可欠と指摘した。