“水”を音楽で表現しようとしたドビュッシー。その思いが結実した交響詩『海』【クラシック今日は何の日?】
クラシックソムリエが語る「名曲物語365」
難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。
ドビュッシー 交響詩『海』 水にこだわりを持った作曲家の集大成
今日3月25日は、クロード・ドビュッシー(1862~1918)の命日です。 フランス印象主義を代表する作曲家ドビュッシーは、『水の反映』『水の精』『雨の庭』など、水を音楽で表現することに強いこだわりを持った作曲家でした。中でも交響詩『海』は、その思いが結集された作品といえそうです。 第1楽章「海上の夜明けから真昼まで」、第2楽章「波の戯れ」、第3楽章「風と海の対話」という副題の付いた3つの楽章からなるこの曲の、初版スコアの表紙には、葛飾北斎の『富嶽三十六景』の中の『神奈川沖浪裏』が描かれています。 しかしこの絵から着想を得た音楽であるか否かは定かではありません。作曲当時のドビュッシーは、オペラ『ペレアスとメリザンド』の成功によって時代の寵児となりながら、女性関係におけるさまざまなトラブルを抱えた時期にあり、作品にはその背景が反映されているとの評価もあります。 1905年10月15日にパリで行われた初演は不評に終わります。しかし自らの指揮によって1908年に再演。熱狂的に受け入れられたことが、現在の評価に繋がっています。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。
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