製作発表会見に臨む（左から）中島かずき、尾上松也、松本幸四郎、いのうえひでのり（松竹提供）

歌舞伎の製作、興行を担う「松竹」と個性的な作品で知られる「劇団☆新感線」がタッグを組んだ新演劇スタイル「歌舞伎NEXT」。その舞台「朧（おぼろ）の森に棲む鬼」（中島かずき作、いのうえひでのり演出）が11月30日、東京・新橋演舞場で開幕する。シェークスピアの「リチャード三世」と「酒呑童子伝説」の世界を融合させた物語で、主人公ライと武将サダミツの二役を松本幸四郎（51）と尾上松也（39）がダブルキャストで勤める。 【写真】「朧の森に棲む鬼」の主人公ライの扮装をする（左から）尾上松也、松本幸四郎 ■17年ぶり上演 「朧の森に棲む鬼」は平成19年、松竹と劇団☆新感線のオリジナル作品として、幸四郎（当時・七代目市川染五郎）主演で初演された。約17年ぶりの上演となる今回は「歌舞伎NEXT」第2弾として、歌舞伎の演出が多く取り込まれるという。 東京都内で9月下旬に開かれた製作発表記者会見で、脚本を手掛けた中島は「歌舞伎NEXTの第1弾『阿弖流為（あてるい）』のときも手応えを感じていたが、それにも増して今回は新しい形で新感線の手法と歌舞伎の手法が融合されるのではないかと、非常に楽しみにしている」と述べた。 いのうえは「『朧の森に棲む鬼』は新感線ファンの中でも人気が高い作品。僕自身もよくできていると自画自賛している作品で、それをもう一回やるというのは自分自身に対する挑戦だ。まさに満を持しての歌舞伎NEXTということになる」と意気込んだ。 ■勘三郎に背中押され さらに「阿弖流為」の企画が立ち上がったとき、中村勘三郎（平成24年死去）から背中を押されたエピソードも披露。「『歌舞伎ってどう作ればいいんだろう』と思っていたときに、勘三郎さんが『歌舞伎役者がやれば歌舞伎になるよ』といわれて、『よし、じゃあ、やっちゃえ』ということになった」 一方、中島は「『阿弖流為』は神と人の話だが、女方が演じると、男でも女でもない、この世のものではない何かが現れる瞬間があった。僕も本当にびっくりした。これは歌舞伎でなければできない。人間が人間じゃないものになる方法は歌舞伎の中にあるのかもしれないと思った瞬間だった」と語った。 その上で、幸四郎と松也に対しては「今回、このお二人がきっと人を超えるものになっていただけると思っているので、非常に楽しみだ」と期待を寄せた。