「北朝鮮兵の投入」をひた隠すロシア、プーチンは記者会見で触れず、前線では戦死した北朝鮮兵士の顔を焼き痕跡隠滅
(国際ジャーナリスト・木村正人) ■ 「ロシア軍は毎日前線全体で前進している」 [ロンドン発]ウラジーミル・プーチン露大統領は12月19日、4時間に及ぶ毎年恒例の記者会見を開いた。そこでは、ウクライナ戦争によるインフレ高進、盟友シリアのアサド政権崩壊、核・化学・生物防護部隊の司令官らの暗殺についての自らの責任には頬かむりし、北朝鮮兵士の参戦には口をつぐむばかりだった。 【写真3点】北朝鮮兵士の顔をロシア兵が焼いているとされるシーン プーチンは記者会見で「ロシア軍は毎日前線全体で前進している。100、200、300メートル単位ではなく、平方キロメートル単位で領土を取り戻している」と強がった。しかし、ロシア西部クルスク州とウクライナにおけるロシア軍の進軍速度は落ちている。 米シンクタンク「戦争研究所」(ISW)の評価(19日)ではロシア軍は11月に1日当たり27.96平方キロメートルずつ前進したが、12月1~18日は同17.1平方キロメートルずつしか進んでいない。英国防省によると、ロシア軍は11月28日に初めて1日の死傷者が2000人を超えた。 11月のロシア軍の1日平均死傷者数は1523人と過去最高を更新した。9~11月の攻撃作戦強化期間、2356平方キロメートルを獲得するのに推定12万5800人の死傷者を出した。1平方キロメートル当たり53人の犠牲を払った計算だ。
■ 北朝鮮兵士がクルスク州の集落奪還、手柄はロシア軍旅団が横取り プーチンはクルスク州奪還よりウクライナ東部ドネツク州での作戦を優先する。「いつになったら自分の家に戻れるの」というクルスク州住民の質問に第155海軍歩兵旅団、黒海艦隊の第810海兵旅団、空挺部隊の第76、106師団、非正規部隊がクルスク州で戦っていると説明した。 「われわれは間違いなくウクライナ軍を追い出す。他に選択肢はない。正確な日付については残念ながら現時点では特定できない」とプーチンは言葉を濁した。クルスク州奪還作戦で武功を立て「数百人の死傷」(米軍高官)を出している北朝鮮には全く言及しなかった。 ロシアの軍事ブロガー(複数)によると、クルスク州プレホボ村の奪還にはロシア軍第155海軍歩兵旅団と北朝鮮軍が貢献した。あるブロガーは北朝鮮軍がロシア軍の支援なしに集落を掌握したにもかかわらず、不特定のロシア軍旅団の手柄と強調されていると主張している。 北朝鮮軍は第155海軍歩兵旅団の拠点である極東ウラジオストクを含む沿海地方のロシア軍施設で訓練を受けたとされる。「プーチンが北朝鮮軍の戦闘作戦への参加を公表しないと決めたことでロシアが北朝鮮から得られる援助の範囲が狭められる可能性が高い」(ISW)と分析する。