高齢患者に必要なのは、元気なうちに「最期のことを考える」こと 医療法人「優和会」理事長 松永平太
黒木)ご高齢の患者さんに3つほど質問するということですが、教えていただけますか? 松永)まず、「最期はどこで死にたいですか?」と聞きます。高齢者はだいたい自宅ですね。2つ目は、「心臓が止まったら心臓マッサージをしますか?」と聞きます。ほとんどの方が「もうやめてくれ。痛くて死んじゃうよ」と言います。3つ目に、「食べられなくなったらどうするか?」と聞きます。管を使って延命すれば2~3年は長生きできます。 黒木)管を使って。 松永)「食べないと死んでしまう」ではなく、寿命が来たから食べなくなるのだと。「無理して延命処置する必要はないのではないか」と聞くと、「そうだね」と言います。大体ができれば自宅で、心臓マッサージのような痛い治療は望まず、食べられなくなったら寿命と考える。なかには、95歳のおじいちゃんに「どこで死にたい?」と聞くと、怒られるのですよ。「医者のくせに縁起でもないことを聞くな」と。でも、死ぬことを考えれば、その向こうにある「生きる」が見えてくる。いま、何をしたらいいかが見えるのですよね。それを「元気なうちに考えておこう」ということです。 黒木)そういったことを高齢者の方々とコミュニケーションなさっているわけですね。 松永)そうですね。縁起でもない話ばかりしています。 黒木)そういう話をすると皆さん、穏やかになるのですか? 松永)普通は死ぬことについて話さないですよね。 黒木)特に医者の方は。 松永)逆に、医者だからやってもいいのかなと思っています。「最期は自宅で」と思うと覚悟ができてくる。いろいろな揺れ動きがあるなかで「本人がこう言ったから」と、一家みんなが同じ方向を向けるのです。そのためにも、元気なうちにまさかのことを考えるのが大事ですね。
松永平太(まつなが・へいた)/医療法人「優和会」理事長 ■1992年、東京医科歯科大学を卒業後、民間病院へ入職。地域医療、看護ケアの大切さ、命を支えるケアを学ぶ。 ■父親が倒れたことにより、1997年に父の診療所「松永医院」を継承。 ■2000年、介護保健制度施行に合わせ「有限会社ハイピース」にて、訪問看護のための介護ステーション「そよかぜ」創設。2001年、医療法人社団「優和会」創設。 ■以降、デイサービスセンター「あそぼ」を設立。社会福祉法人「おかげさま」創設。老人保健施設「夢くらぶ」、「夢ほーむ」、認知症対応型デイサービス「おかげさま」創設。 ■2023年、看護小規模多機能「にこにこ」創設。 ■2024年には、地域包括支援センターを創設予定。 ■医療・介護・福祉を通じて社会貢献することを使命とし、「“いのち”を助け、“いのち”を元気にし、“いのち”を輝かせる」ことを経営理念として掲げる。いまの命を助けるのは医療者として当たり前であると考え、「患者の未来の笑顔を守ること」を使命とし、多職種協働を図っている。