トップボディビルダーに人気のホエイペプチドとは?「パンプ感がすごい」と嶋田慶太選手が太鼓判
ホエイプロテインはサプリメントの王道となっているが、ホエイペプチドのことはよく知らない人もいるかもしれない。ここではボディビルのトップ選手たちが愛用するホエイペプチドをクローズアップ。ペプチドを研究し、素材を開発する雪印メグミルク株式会社の森谷勇志さんとホエイペプチドを愛用するトップビルダー嶋田慶太選手の対談によりその魅力をお伝えしていく。 [初出:IRONMAN2024年11月号] 【写真】5000人以上が「いいね」を押した日本選手権での嶋田慶太選手
──すでに「ホエイペプチド」を知っている人は多いと思います。改めてアミノ酸やタンパク質とは、どういった違いがあるのでしょうか。 森谷 簡単に言うと、ペプチドとはタンパク質を部分的に分解したもので、アミノ酸とタンパク質の中間の成分です。アミノ酸が2~50個ほど結合したものをペプチドと呼びます(50~100個より多く結合したものがタンパク質)。 ──成分の長さが違うということは、体内における吸収・分解スピードにも違いがみられますか。 森谷 はい。これまでは、摂取したタンパク質は胃に到達してアミノ酸に分解されたのち、腸から吸収されると考えられていました。しかし近年の研究では、アミノ酸が2つ結合したジペプチドや3つ結合したトリペプチドの状態でも腸から吸収できる構造があると分かってきています。つまり、一部のペプチドは、アミノ酸と同じくらい吸収速度が速いとも言えるのです。 ──愛用者にはうれしい発見ですね。嶋田選手も愛用中だとか。 嶋田 ボディビルを始めた2014年からなので、10 年になりますね。アイアンマンなどの雑誌や鈴木雅さんのトレーニング動画で、ペプチドの存在を知ったと記憶しています。これを飲めばああいう身体になれるのか!と(笑)。 ──実際に摂取して、体感はいかがでしょうか。 嶋田 今はパフォーマンスの向上を求めてトレーニング中に飲んでいます。体感としては、パンプの継続が一番ですかね。 ──ホエイペプチドは、ホエイタンパクを分解したものです。どのような特徴があるでしょうか。 森谷 ホエイタンパク質は、アミノ酸の構成としてほかのタンパク質よりもBCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン)が豊富に含まれます。ホエイペプチドも同様にBCAAを多く含みます。 嶋田 ちなみに僕、BCAAもペプチドと一緒にトレーニング中に摂っているんです。 森谷 アミノ酸とペプチドは、吸収経路が異なるため、BCAA摂取によって期待している効果がより強く感じられる可能性はあるかと思います。 嶋田 なるほど。僕は以前はトレーニング時間が長くて、後半は惰性で行ってしまうときもあったんです。そういうときはペプチドをボトルに追加していたんですね。集中力が続くような印象があるんです。 森谷 実際、ホエイペプチドの具体的な機能性に関しては未知な部分が多いです。研究は進んでいますが、実際のユーザーの皆さまが感じ取っていることは大変興味深いです。 ──嶋田選手が集中力の持続を感じたのであれば、それが一つの正解であると。 森谷 はい。例えば、トレーニング後に摂取することによって疲労回復の促進効果を感じるようであれば、その可能性もあると言えます。機能性の全貌が明らかになっていないぶん、愛用してくださっている方々の体感が答えになってきます。「肉、魚、卵など、どの動物性タンパク質がベストなのか?」という話題が時折SNSで取り沙汰されますが、各々のタンパク質の分解過程で生じるペプチドの違いがそれぞれのタンパク質のポテンシャルの差を生み出しているのでは?と個人的には考えています。 ──ポテンシャルが未知数。 森谷 研究の視点で補足するとすれば、先ほどの話につながりますが、ペプチドはアミノ酸だけでなくプロテインとも吸収速度が異なります。それぞれのスピードで体内に取り込まれていきますので、組み合わせたり、摂取タイミングをズラしたりことで、単体摂取とはまた違った効果実感を得られるというのはあるかもしれません。 ──嶋田選手は、ペプチドをどのように摂取していますか。 嶋田 糖質と混ぜて水で割って、トレーニングが終わるころには飲み終わるように、飲んでいます。今は1回あたり30gずつで調整していますが、昔は倍の60gでした。トレーニング強度は今のほうが上がっていますが、全体のボリュームは抑えているのでそれに合わせて摂取量を減らした感じです。ただ、30gをベースに下半身の日は少し多めに摂るなどの微調整を加えています。 ──以前、お伺いしたところ嶋田選手が憧れる鈴木雅選手は1回あたり40g摂取しているそうです。 嶋田 筋量の違いですね。あと10g分、頑張って増やします! ──いま、トレーニング時間はどれくらいですか? 嶋田 上半身は1時間いかないくらいで、胸なら50分くらいです。下半身は90分くらいです。 ──飲んでいるのはトレーニング中のみ、ですか。 嶋田 パンプ目的で、大会のときにも飲みますよ。マルトデキストリンと混ぜて、水で割ります。大会は進行によって時間が読めないので、念のため60g入れて準備していきます。1次予選、2次予選、決勝、ポーズダウンと進むにつれて、パンプさせようと動作すると通常、僕は筋肉が痛くなってくるんです。でも、ペプチドを飲んでおくと、時間が経っても筋肉の内側から押し出されるような張り感があるなと感じています。それが一番の体感ですかね。これは、トレーニング中にも同じことが言えます。BCAAだけを飲んでトレーニングをしているときは、時間が経つにつれてパンプが冷めて、筋肉の痛みを強く感じるようになるんです。ペプチドを摂ると、そこが一番変わりますかね。あと、もしかしたら気温とか気圧とかも関係してくるかもしれませんが、飲んでおくと浮き出てくる血管が、明らかに太くなります。 ──ちなみに、大会では糖質をマルトデキストリンにする理由はありますか? 嶋田 血糖値の上がり方がマルトデキストリンのほうがスピーディだからです。すぐに上げて、すぐに使うイメージですね。 ──ペプチドの摂取量に関しては、何か分かっていることはあるのですか。 森谷 「分かっていること」としてお伝えできるデータは今はありませんが、量の変化で効果実感にも変化があるということは、やはり一つの答えになります。 ──例えば、嶋田さんと同条件で摂取した人がいたとしても別の効果実感を得る人がいるかもしれませんよね。 森谷 そうですね。同じかもしれませんし、人それぞれに感じ方は異なる可能性があります。異なった場合に、嶋田さんが違うというわけでもないですし、別の人が間違っているというわけでもありません。だからこそ、いろいろな方々に摂取していただいてそれぞれの効果実感をシェアしていただきたいですね。そういったお声の積み重ねが、ホエイペプチドのさらなる研究開発につながります。 ──先ほど、トレーニング中にBCAAも飲んでいるとのお話しでした。 嶋田 BCAAは単体で口に入れる感じで、5g ×3回目安で摂っています。 ──ほかにも飲んでいますか? 嶋田 トレーニング後にグルタミンと、ホエイプロテインです。トレーニング中にペプチドを飲んでいるので、正直このタイミングのホエイプロテインが必要かどうかは、ちょっと考えてもいいかなと思ってはいます。食事にしてもいいかなと思ってはいますが、僕は基本的に日中にトレーニングをするので、トレ後にプロテインを飲んでパーソナルの仕事を1本終えてからお弁当を食べる、あるいは自宅に戻ってから食事という流れに落ち着いている感じです。 ──いわゆる「ゴールデンタイム」にはさほどこだわらない。 嶋田 そうですね、あまりこだわってはいません。 ──トレーニング後のサプリメンテーションという観点で、ペプチドはどうなのですか? 森谷 さまざまな種類のペプチドが含まれているものなので、一例ですが「グルタミンだけ摂っていたときとは異なる体感がある」というような声があったとしても、おかしくはないと思われます。 嶋田 僕の場合は摂取量が多いからだろうと想像はできるんですけど、セミナーなどでも「トレーニング中にペプチドを飲んでトレーニング後にもペプチドを飲むと、お腹を下してしまう」という声を聞いたことがあるんです。 森谷 そういった事案に対する検証結果があるわけではありませんが、おそらくペプチドというよりは、乳糖に反応しているのではないかと思います。牛乳・ヨーグルトなど、そのほかの乳製品に対してもお腹がゴロゴロしてしまう方は、乳糖の分解能が低いと言えます。となると対処法は、やはり摂取量のコントロールになってきますね。 ──ホエイペプチドは上級者向けのようなイメージがあるかと思います。初心者のうちから摂ってもいいわけですよね? 嶋田 僕が経験してきたなかで言えることは、結論としては「摂ったほうがいい」なんです。ただ、摂るときに、ペプチドを摂るべき理由をきちんと理解してからのほうがいいかなと思います。僕は先ほどもお伝えしましたが「鈴木雅さんが飲んでいるから飲む」で飲んでいたので、摂取量を多くし過ぎて吸収できずに下してしまうとか、それってすごくもったいないじゃないですか。そのあたりのことを理解していれば、摂り始める時期というのは初心者であっても上級者であっても早いに越したことはないと思いますよ。 ──仮に、アミノ酸かペプチドかプロテインで優先順位をつけるとしたら? 嶋田 僕は、最初にペプチドを選びますね。一日の生活における優先順位が人それぞれあると思うのですが、僕のなかではトレーニングが第1位なんですよね。そこで一番のパフォーマンスを発揮したいと思ったときに、ペプチドの力は必要だなと思います。 森谷 イントラドリンクとしてBCAAやEAAを摂取している方は多いと思いますが、ペプチドはアミノ酸と同等程度の速度で吸収される可能性があると思います。加えて、ペプチドならではの機能性自体は、まだまだ見えていない部分ばかりですが、期待できるものは大きいです。なので、トレーニングのパフォーマンスを最大化させる目的で最中に飲んでいただくという選択はかなり良いと思います。
しまだ・けいた 身長167cm、体重75㎏(オン)、77㎏(オフ)。ゴールドジムにてパーソナルトレーナーとして活動中。2019・2021~2022年・2024年JBBF日本クラス別選手権75㎏級優勝。2022・2024年JBBF日本選手権2位。 もりや・たけし 雪印メグミルク株式会社機能性食品事業部。2019年早稲田大学大学院先進理工学研究科修士課程修了。同年、雪印メグミルク株式会社入社。学生時代は早大バーベルクラブに所属。
文:鈴木彩乃 撮影:木川将史 大会写真:FITNESS LOVE編集部