英国女性に最も多い「法律違反」の意外な中身とは?4分の3が女性、10万人弱の女性が起訴された年も
ヨーロッパで最も広く使われている貧困の基準は、個人または世帯の収入が当該国における世帯収入の中央値の60パーセント未満というものだ。つまり、統計専門家が各世帯の収入を調べて最も低い値から最も高い値まで順に並べ、中央の値を計算する。これが、平均的な人が生計を立てるために使っている金額だ。誰もが平均的な収入を得られるとはかぎらないが、誰もが平均的な人の収入の少なくとも60パーセントくらいは稼げるだろうと想定している。
具体的な金額で言うと、イギリスのジョゼフ・ラウントリー財団によれば、2016/2017年度、イギリスの世帯収入は、住居費を除いた可処分所得の中間値が週あたり425ポンド(約8万円)(年間2万2100ポンド〈約418万円〉)だったので、この60パーセントは1万3260ポンド(約250万円)になる。 この計算に基づき社会基準値協会では、510万人の女性、460万人の子ども、450万人の男性が貧困状態にあるとしている[10](訳注:金額と人数は経年変化を見るため計算方法の調整を行ったうえ算出したもの)。これは、女性の20パーセント、子どもの34パーセント、男性の18パーセントに相当する。
イギリスとアメリカにおける貧困の女性化のおもな要因は、1980年代以降のひとり親世帯の増加で、ひとり親の90パーセントが女性だ。アメリカの統計によれば、1960年には、貧困層のうち母親だけの世帯が占める割合は28パーセントだったが、1987年には60パーセントと、倍以上になっている[11]。イギリスでは現在、ひとり親の45パーセントが貧困状態にある。これは、その子どもも貧困のなかで暮らしていることを意味する。政府は子どもの貧困率を引き下げようと、法的拘束力のある目標値を2010年に導入したが、2016年に撤廃し、その後ふたたび導入する計画はない。
イギリスでは独身の女性(未亡人になった高齢女性とパートナーがいない若い女性を含む)全体で見ても、独身男性より貧困率が高い。しかも、ここ数年のあいだに独身男性の貧困率は下がってきた[12]。データからは、貧困の要因として障害も浮上する。貧困状態にある人のうち370万人に障害があり、障害者に女性が占める割合は男性より高く54.4パーセントだ[13]。 さて、誰が障害者の介護をするのか? 家族で介護をしている人(つまり「無給の介護人」)の4分の3近くが女性だ。さらに、有給の介護職のほぼ80パーセントが女性であることを忘れてはいけない。介護は最も賃金が低い分野の一つでもある。