極秘のはずの弾道ミサイル基地内部を公開した北朝鮮、その狙いとは
■ 2.戦争時には、ミサイルが飛んでくる想定 北朝鮮の地下のミサイル基地は、米国の偵察衛星にすべてキャッチされているはずだ。 もし戦争になれば、そのミサイル基地を破壊するために、ミサイルが攻撃してくる可能性が高い。 ミサイル基地に配置が予定される部隊は、平時には麓の駐屯地に居住するが、戦争開始と同時に攻撃され、破壊される。 そこで、戦争になれば、ミサイル部隊兵は坑内の基地に入って戦闘態勢をとる。また、衣食住もその坑内で行うようになる。 戦争になる兆候があれば、北朝鮮はその直前にTELに搭載されるミサイルをトンネル内部の出入り口から出して、上空の衛星からは発見されない森林地帯に入って隠れて発射準備を行うだろう。 必要であれば、坑内に設置された発射坑からも発射する。 もしも、坑内から出る前に敵からミサイル攻撃されれば、出入口やミサイル発射坑は破壊され、ミサイルとミサイル部隊、ミサイル司令部は坑内に閉じ込められてしまう。 敵のミサイル攻撃を防ぐために、ロシア製の「S-400」あるいはこれと同等の北朝鮮開発の防空ミサイルを配備するだろうが、ミサイル基地すべてを守ることができるほどの量は保有していない。 図2 戦略ミサイル基地の概要とミサイル攻撃を受ける様子のイメージ
■ 3.金正恩視察写真で分かる重要なこと 10月23日の朝鮮中央通信によれば、金正恩総書記が戦略ミサイル基地を視察したという。 金正恩氏の行動と指示が、文章で、またいつものように写真添付で公開されている。 その写真は5枚あり、そこに極めて重要なものが写っていたので紹介する。それは、1枚目と2枚目の写真である。 写真1 戦略ミサイル基地視察の様子 左:1枚目、右:2枚目 内容も重要なのだが、掲載する順番も特異なのである。 北朝鮮は写真を見せる場合、通常なら行動の順番に並べている。 例えば、基地を視察するのであればまず、金正恩氏の訪問と玄関等での出迎えの儀式から始まり、次に内容の視察、直接の指示、最後に記念撮影の順番が一般的だ。 ところが、今回の写真はミサイル基地視察写真の順番が通常とは大きく異なっている。 1枚目は、「林の中を歩く金正恩」である。 戦略ミサイル基地を視察しているのになぜ、「林の中を歩く様子」が1枚目に来るのか。極めて奇妙であるが、これを最も訴えたかったと見るべきだ。 よく見ると、背後には今出てきたばかりの小さなコンクリート造りの出入り口(非常口)が見える。これが、図1の(2)のところである。 米軍が、出入り口やミサイルの発射坑をミサイル攻撃しても、非常口から金正恩氏やミサイル部隊の兵達を出入りさせ、生活するための食料品などを搬入・搬出できる。 そして、ミサイルの一撃を受けても生き残り、反撃する能力を維持し、命令や指示も出せる。 このことを主張したかったのだろう。 写真2 実は、ミサイル基地の非常口から出てきている金正恩一行 2枚目は、坑内(図1の(1))の様子である。 ミサイル基地の坑内をはっきりと写した写真を北朝鮮が公表したのは、私の記憶では初めてのことだと思う。 衛星など外部から見えない部分を見せたのである。4枚目と5枚目が、その中に戦略ミサイルを配置している様子である。 写真3 坑内に配置してあるミサイル(4枚目と5枚目) この写真のように、北朝鮮のミサイル基地がすべて整備されているのかというと、おそらく、最もよくできたものを見せたのであろう。 これからこのように基地を整備する、という意図を示したものと考えてよいだろう。