韓国・尹錫悦氏の弾劾、一転不成立も与党代表「大統領の秩序ある退陣を推進する」
【ソウル=小池和樹】韓国国会(定数300)は7日夜の本会議で、野党6党が提出した尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の弾劾(だんがい)訴追案の採決に臨んだ。保守系与党「国民の力」の議員の大半が議場から退席したため、訴追案は不成立となった。尹氏の大統領職は継続する。尹氏が同日午前に発表した国民向け談話で、戒厳令宣布を謝罪し、任期途中での辞任を示唆したことを受け、与党は訴追案への反対で結束した。
韓国大統領の弾劾訴追案の採決は2004年の盧武鉉(ノムヒョン)、16年の朴槿恵(パククネ)両大統領以来、3人目。盧、朴両氏に対する訴追案は可決した。
野党は11日にも臨時国会を開いて改めて、弾劾訴追案を採決する構えで混乱は続きそうだ。
訴追案の可決には、在籍議員の3分の2にあたる200人以上の賛成が必要で、「国民の力」(108議席)から8人以上が賛成に回る必要があったが、同党は訴追案への反対方針を決め、大半の議員は議場から退席した。左派系最大野党「共に民主党」が主導権を握る国会は、午後9時20分頃まで与党議員が議場に戻るのを待ったが、聯合ニュースによると、出席議員は195人で採決の成立に必要な200人に満たず、訴追案は不成立となった。
訴追案への賛否を巡り、国民の力はここ数日揺れ動いた。5日に反対方針を決めたが、韓東勲(ハンドンフン)代表が6日朝に「職務執行停止が必要だ」と発言すると、訴追案への賛成を公言する議員が相次いだ。
しかし、尹氏が7日午前の国民向け談話で「任期を含め党に一任する」と話し、27年5月までの任期を短縮する意向を初めて示したことを受け、採決直前に開かれた議員総会で改めて訴追案に反対することを確認した。6日の時点では「非常戒厳の宣布自体が違憲だ」と訴追案に賛成の意向を示していた韓氏に近い趙慶泰(チョギョンテ)議員も、談話を受けて反対に転じた。
与党が弾劾を退けたのは、尹大統領が罷免(ひめん)された場合の大統領選挙で不利な状況に立たされるとの判断があったとみられる。