ゼニスの良心!? 顧客向けロードショーのために来日したキーパーソンに聞いた「歴代6名のCEOと仕事をすることの難しさ」と新世代機、創業160周年に向けて
Ref.03.3119.3600/56.M3100 149万6000円 スペック:自動巻き(エル・プリメロ 3600)、毎時3万6000振動、約60時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース(シースルーバック)&ブレスレット。直径41mm。10気圧防水。 –新作投入のタイミングも重要なヒットの要因だったわけですね。ところで、デファイ、パイロット、クロノマスターのお話は聞きましたが、コレクションの柱のひとつであるエリートからは新作が出てきていませんね。 「ゼニスは来年で創業160周年を迎えるので、それに合わせてエリートが生まれ変わる予定です。詳しくはお伝えできませんが、まったく新しいムーブメントを搭載した新型をお見せできると思います。かつて『アカデミー』シリーズとして展開していた『ゼロ-G』や『ダブルトゥールビヨン』といった複雑機構は現在『デファイ』に搭載していますが、それも今後は変わっていくことになるでしょう」
インタビュー後記
ロマン氏がゼニスに入社した2006年当時のコレクションは、確かにナタフ氏の強烈な個性が反映されていた。取材中も話題にあったが、当時のラインナップはとにかく多かったように思う。時計店で在庫状況にバラつきが出るのも仕方のない状況だっただろう。そこからのちにロレックスのトップになるデュフールCEO時代で一気にクラシック回帰。看板アイテムだったクロノマスター オープンは一気に端正な顔立ちになり、多くのモデルが過去のものとなった。 その後、ブランドを大きく変えたのは、やはりジャン-クロード・ビバー氏の影響が大きかったに違いない。2017年にCEOを経て会長に就任すると、その年のバーゼルワールドで『デファイ エル・プリメロ 21』を発表。このモデルは、名門ゼニスのイメージに現代性をもたらした点でも極めてセンセーショナルだった。それを受け継ぐ形で入ったジュリアン・トルナーレ氏がCEOとなり、現体制を構築したのである。 時計メディア編集者の正直な意見として、2010年から2016年ごろまでのゼニスは変化が読みにくく、とても触れにくかった。その際たる例が2014年にひと型だけ発表された外部ムーブメント搭載モデル。このモデルの存在をロマン氏に確認すると、とても残念な顔をしながら「あの時計は800本作ったが、すぐに生産をやめた」と言った。彼の存在をもってしても止められなかったのだろう。価格競争力と希少性からすぐに完売したそうだが、製造が間違った判断であったことは筆者から見ても明らか。ロマン氏が冒頭に語ってくれたように、ゼニスのゼニスたる所以は、半世紀以上に及ぶ歴史を持つル・ロックルのマニュファクチュールであることなのだ。
今年の1月には、主にリシュモン グループでキャリアを積んだブノワ ド クレーク氏がゼニスの新たなCEOに就任しており、その手腕に注目が集まっている。果たしてゼニスの方針はまた大きく変わるのだろうか。ひとまず今回のインタビューでロマン氏が教えてくれたように、来年の創業160周年が私たち時計ファンにとって楽しい内容になりそうなことだけは間違いないだろう。 ※価格はすべて記事公開時点の税込価格です。
TEXT / Daisuke Suito Photo / Kensuke Suzuki (ONE PUBLISHING)