長谷川博己「アンチヒーロー」強力布陣で挑む勝算 VIVANTスタッフと、日曜劇場7年ぶり主演で話題
では、どこがタイトルで謳う「アンチ」なのか。それは、無罪を勝ち取るためには、法に触れない範囲で、手段を選ばない点になるようだ。 第1話では、検察の示した状況証拠を無効にするために、いくつかの「アンチな手段」が描かれた。1つは、先ほども述べたとおり、犯行時の指紋とされた証拠だ。被害者の5歳の息子に、容疑者の緋山とよく遊んでいたことを証言させ、容疑者が犯行時の前に自宅(犯行現場)に入ったことがあり、指紋はそのときに付着したものであることを示した。
ただし、息子と容疑者は仲良くしていたものの、法廷での証言とは異なり、犯行現場に指紋がついた状況は、別の同僚が息子と遊んだときの話だった。明墨はそれを巧みに利用し、容疑者の行為であるとして法廷で主張したのだ。 もう1つは、犯行現場に居合わせ、隠れて言い争いを聞いていた証人である尾形仁史(一ノ瀬ワタル)の偽証の証明だ。 明墨は、検察側の証人に立場を隠して接触し、飲食をともにするなかで尾形に聴覚障がいがあることを確信した。そして本人の同意がないまま、法廷で聴覚障がい者であることを示し、証言証拠には検察の誘導があったことを証明した。
法廷を出た後で明墨は、隠していた障がいを許可もなくさらしたことを尾形から非難される。 明墨は勝つために手段を選ばないとしながらも、尾形に対しては、障がいを理由に解雇された過去の職場の数々を訴えれば、1000万円は勝ち取れること、自身がその弁護を無償で引き受けることを伝えた。この展開を見ると、ただの冷酷なだけの男ではなさそうだ。 1月期ドラマで同じくTBS系の『不適切にもほどがある!』では、令和社会の過度なコンプライアンスや社会の不寛容をおもしろおかしく風刺したことで大きな話題になった。
本作は、同作と同様に「社会を切るドラマ」という共通点があり、そのシリアス版となることへの期待がある。 本作のアンチヒーローを謳う弁護士は、法は犯さない。しかし、無罪を訴える依頼人を信じ、検察と対峙する裁判に向き合う過程で、手段は選ばない。第1話で示されたのは、職業倫理を問われれば、アンチになるかもしれないというヒーローの姿だった。 アンチな弁護士が社会に立ち向かう本作には、差別やいじめ、ネットの誹謗中傷など現代の社会問題に切り込んでいく社会性が映し出されることも期待される。取り上げる事件の背景や容疑者の過去など、人間ドラマの側面としても描かれるだろう。