長谷川博己「アンチヒーロー」強力布陣で挑む勝算 VIVANTスタッフと、日曜劇場7年ぶり主演で話題
殺人事件を題材にした第1話は、正統派の法廷ドラマとあまり変わらない印象を受けたが、まだ始まったばかりだ。 第1話のラストで証人である尾形を退場させられた検察は、これまで見つからなかった凶器を証拠として出してきた。 一方、容疑者・緋山の素性や、そもそも真犯人であるのかなど、多くは謎に包まれたままだ。明墨のアンチの真価も、これから明らかになっていくのだろう。 ■ダークヒーロー描いた「ダークナイト」 ダークヒーローが主人公の名作といえば『ダークナイト』(2008年公開)を思い浮かべる映画ファンは多いだろう。
法で裁けない悪に対して“正義の悪”を執行するジョーカーは、あまりにも苛烈な手法で正義のあり方を問いかけ、観客を圧倒する大きなインパクトを残した。ジョーカーを演じたヒース・レジャーからは、圧倒的な狂気がにじみ出ていた。 そんなハリウッド大作と作品規模は異なるが、根底にある社会に対する正義と悪への疑問を投げかるメッセージは、『アンチヒーロー』とも共通している。明墨のイントロダクションの打ち出しからは、ジョーカーと通底する雰囲気を感じさせる。
明墨の過去はまだまったく語られていないが、明墨が娘のように頻繁に連絡を取る女子高生・紗耶(近藤華)は事件の被害者であり、何らかのトラウマか障がいを抱えているように垣間見えた。 明墨のアンチヒーローとなった信念に、紗耶の過去がつながっているのは間違いないだろう。 ■野村萬斎と長谷川博己はどう対峙するか そしてラストでは、検事正・伊達原泰輔(野村萬斎)の「罪を犯してもやり直せる。幸せになれる」という言葉と、それとは正反対である明墨の主張を重ね合わせ、2人の「考えてみてください」という投げかけの言葉で締めくくられた。
立場と主張、信念が正反対のように見える弁護士・明墨と検事正・伊達原の過去がどうつながり、どのように2人が対峙していくのか。それは、紗耶の過去とも重なってくるのだろうか。 まだ始まったばかりだが、明墨は既存の弁護士ドラマの役柄を超えたダークヒーローとなり、長谷川博己はそのアイコンとなるのか。第1話では、そうなる雰囲気は醸し出されており、ポテンシャルはありそうだ。この先の展開に注目していきたい。
武井 保之 :ライター