法で裁けない悪を退治する! 復讐のヴィジランテ映画5選!
移民一家を救うために銃を取る!『グラン・トリノ』
生きる伝説、クリント・イーストウッドが78歳で手掛け、観る者を豊かな感動で包み込んだヒューマンドラマである。妻を亡くしたばかりのコワルスキーはいつも苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、口を開くと悪態ばかり。当然、息子や孫からも嫌われ、彼はいつも一人ぼっちだ。唯一の誇りは、倉庫に眠る1972年製の名車グラントリノだけ。そんな矢先、最初は毛嫌いしていた隣人のアジア系移民家族との交流がはじまり、唯一無二の絆が育まれていき……。 イーストウッド映画らしい「孤高のタフガイが守るべき他者のため命を賭けて闘う」という文脈を踏襲しながら、老い、戦争の記憶、過去の贖罪、信仰、尊厳、移民国家アメリカといった多様なテーマが融合し、驚くべきしなやかさと無駄のなさで照射された傑作。家族以上に親しみを寄せる移民一家がギャングの脅威にさらされる時、老人は彼らのために銃を取る。しかし暴力は暴力しか生まないと悟りーーーそこで下す思いがけない決断が感動的だ。彼が生涯に渡って続けるアウトサイダー・ヒーローとしての究極の形がそこには刻まれている。
観る者の倫理観を揺さぶる問題作!『狼よさらば』
凶悪犯罪の発生率が過去最悪のペースで増加する70年代のニューヨーク。ある日、建築会社で働くポールの自宅が暴漢たちの急襲を受け、居合わせた妻は殺害、娘は凌辱された末、心神喪失に陥ってしまう。悲しみを乗り越えようとする彼だったが、取引先の相手から拳銃をプレゼントされたことで何かが変わる。いつしか街にはびこる犯罪者を探し鉄槌を下す”謎のヴィジランテ”となって夜の街を徘徊するようになりーーー。 地下鉄や川沿いで一人、また一人と悪が葬られる異常事態によって、犯罪発生率はこれまで警察がなしえなかったレベルで急激に下降。市民の一部からはその行動が大いに称賛される……という個人と社会に目を向けた物語を展開させ、加えてそこに西部開拓時代の人々が自ら銃を取ってきたアメリカ史すら示唆しながら、本作はなんとも挑発的な切り口で観る者に出口なき命題を突きつける。束の間の平穏を手にした先には何が待ち構えるのか。ブロンソン主演の同シリーズは全5作に及ぶ。気になる方はぜひその後の命運を見届けてほしい。