県内飲食店、一棟貸しの宿に参入 非接触ニーズ対応、コロナ禍以降続々と
県内でコロナ禍以降、一棟貸しの宿泊施設が増える中、飲食店が経営に乗り出す動きが見られる。コロナ禍で飲食業が不振に陥ったことから「非接触ニーズ」に対応した新業態としてチャレンジしたり、宿泊とセットにすることで本業の食事をより楽しんでもらうために参入したりと理由はさまざまだ。人手を掛けずに始められる利点があり、さらに動きは加速しそうだ。 北日本新聞のまとめでは旅館業法に基づき、県が2020年1月~23年3月に富山市を除く14市町村で営業を許可した宿泊施設は52カ所で、うち約4割の20カ所が民家を改修した宿やコテージ、グランピングなどの一棟貸しだ。富山市では、20年1月~24年9月に許可を出した31カ所のうち、半数を超える18カ所が一棟貸し施設だった。 一棟貸しは1日1組限定で利用するのが特徴。コロナ禍以降、周囲を気にせず家族や友人同士で滞在したいというニーズの高まりを受け、増えているとみられる。人手を掛けずに参入できる利点もあり、飲食業界からの参入も目立つ。 高岡市駅南5丁目でスープカレーやジンギスカンの飲食店を営むマルナグループは、コロナ禍で売り上げが半分以下になったことを踏まえ、新店の出店計画をやめ、既存店近くに宿泊施設「マルナ家」を23年3月にオープンした。宿泊者は施設の「スマートロック」を開閉できる暗証番号を受け取り、チェックインやチェックアウトもスタッフと会わずに行う。 今月中旬には同市中川園町の民家の一部でゲストハウスも開業した。南奈奈代表は「今後は宿泊業を拡大させ、飲食との両立を図っていきたい」と話す。 氷見市朝日丘の氷見牛焼き肉店「氷見牛屋本店」では24年1月、店舗敷地内に一棟貸しの「GYU-YA VILLA」を開業。鉄板焼きレストランや貸し切りサウナを備え、宿泊しながら氷見牛を味わえる。オープン当初は能登半島地震の影響で利用が少なかったが、「北陸応援割」などで訪れる人が増えている。 運営会社細川の細川好昭代表は「市内の宿泊施設と共存しながら地域が盛り上がる一助になればいい」と語った。