北朝鮮の”ラフプレー”を助長した森保ジャパンの「攻め手のなさ」 ”飛車角落ち”のチームはどうやって点を取るのか
北朝鮮もサイドからカウンターをねらっていたので、菅原由勢らのサイドバックが高い位置を取りにくかった面もある。堂安律は縦へ仕掛けるドリブラーではないため、サイドを崩すにはコンビネーション、味方の関わりが必要。だが、局面に人数を増やせば、他が薄くなる。そのときはカウンターを警戒しなければならない。 この攻撃への人数のかけ方と、リスク管理のバランスをうまく調整できず、日本はサイド攻撃のスピードが上がらない。その結果、そこそこ攻め、そこそこカウンターを食らう、消化不良の1-0に終わった。 チームの仕組みが変わってしまったことは大きい。カタールW杯以降の森保ジャパンは、伊東純也と三笘薫の両ウイングを固定し、縦に勝負できる彼らの幅取りをベースに立ち位置を整えてきた。伊東、三笘は1人でライン際を制圧できるので、周りは必要以上に追い越さなくてもいい。即ち、カウンターに備えた立ち位置を取って、全体のバランスを整えやすくなる。 しかし、今の飛車角落ちの構成ではそうもいかない。サイドに人をかけなければ崩すことができず、かけすぎればバランスを失ってカウンターを食らう。決定力不足を含め、ひと昔前の日本代表を思い起こすようであり、同時にウイングの重要性が改めて身にしみた。 一方、その点では左サイドに入った前田大然は縦に行けるスピードがあり、今回は右サイドよりもパフォーマンスが良かった。ただ、スピードに任せた同サイドの裏抜けが多く、タメもエグりも無いまま即時の折り返しがゴール前へ入ってくるため、誰もボールに間に合わない。上田綺世のツマ先くらいしか間に合わない。これではゴール前に厚みを作れないので、タイミングの共有、あるいは前田を走らせるスルーパスも角度やルートを工夫する必要がありそうだ。 2024年。両ウイングの異変により、昨年までのアグレッシブな森保ジャパンとは印象が変わってしまった。9月から始まるW杯最終予選に向け、チームは再び勢いを取り戻せるか。前回の最終予選も苦労したが、やはり今回も一筋縄では行きそうもない。 [文:清水英斗]