清和会(旧安倍派)の解体と日台関係の危機
台湾に意外に少ない「知日派」
ところが、安倍氏の殺害、岸信夫氏の病気による政界引退が重なると、清和会や日華懇の議員らは、われこそは安倍路線の継承者であるとばかりに台湾との良好な関係を競って誇示するようになり、台湾の民進党政権内に困惑する声があがるほどだった。パーティー券問題で前述のように清和会が解散するという事態となり、この2月29日に衆院政治倫理審査会が開かれたとはいえ、清和会幹部への責任追求の声はやまない。清和会と日華懇はイコールではないが、今後、日本政治の親台派のパワーがどれだけ維持されるのか極めて不透明な状況になっている。 一方、台湾側では今一つ、日本の政治状況への危機意識が浸透していないように見える。台湾の政党や議員の中には、意外なほど知日派が少ない。日本のほうが台湾の知識を持っている議員が多いように感じる。民進党ですら、日本に強い関心を持っている議員は数えるほど。国民党や民衆党はまったく思いつかない。両党のなかにも、例えば日本外交について担当者を探しても、見つからないのが現実である。 台湾の民間の人々は日本の情報を日々詳しくフォローしており、能登半島の大地震に対しても、2週間で25億円相当の義援金を集めてくれた。台湾社会の幅広い対日理解に比べて、台湾政治のほうは「知日派」の育成がかえって遅れているような気がする。 台湾側が日本側に対して繰り返し環太平洋パートナーシップ協定(CPTTP)の台湾参加について協力を求めるのもいいが、清和会の衰退でさらにその道は遠くなる可能性もある。現在の自民党内で主流である岸田派や麻生派、茂木派についても、対日人脈を開拓していくべきだろう。この3派は、実はもともと1972年に中国を選び、台湾を切り捨てた「田中派」「大平派」の系譜を引き継いでいる。本質的には台湾にそこまで友好的ではない。現実的に台湾がどのような対日外交を展開すべきか、5月に発足する頼政権にはしっかりと考えてもらいたいところだ。