【速報】国際芸術祭「あいち2025」の参加作家が発表。沖潤子、小川待子、アドリアン・ビシャル・ロハス、ダラ・ナセルら。人間と環境の関係がテーマに
参加アーティスト
第一弾として発表された参加アーティストは、ダラ・ナセル、沖潤子、小川待子、アドリアン・ビシャル・ロハスの4名。 今回は発表されなかったが、全作家数は前回より少ない50組程度を想定しており、そのぶんパフォーマンスなどのプログラムを充実させる予定だという。 アル・カシミは日本の作家はもちろん、自身が属するアラブ地域のアーティストが本展に参加する意味についても考え伝えることを重視していると語る。 ダラ・ナセルは1990年レバノン・スール生まれ、同国ベイルート拠点。多様な素材を用いて、抽象概念とオルタナティブなイメージを表現する。絵画、パフォーマンス、映画などのジャンルを横断した作品を手がける。ナセルの作品は、資本主義と植民地主義的な搾取の結果として悪化していく環境、歴史、政治的な状況に、人間と人間以外のものがどのように関わり合っているかを探求する。その作品を通して、環境がゆっくりと侵され、侵略者が搾取を行い、インフラが崩壊する様子を、人間以外のものの視点から表現する。 会見では2023年の第15回シャルジャ・ビエンナーレでの展示の様子などが紹介された。 小川待子は1946年北海道生まれ、東京都拠点。東京芸術大学工芸科を卒業後、1970年からパリ国立高等工芸学校を経た後、人類学者の夫の調査助手として西アフリカ各地で3年半を過ごし、現地の土器づくりの技法を学んだ。パリ滞在中に鉱物博物館で、鉱物の美しさのなかに「かたちはすでに在る」という考え方を見出し、ゆがみ、ひびや欠け、釉薬の縮れなどの性質を活かし、作ることと壊れることの両義性を内包する「うつわ」として、始原的な力を宿す作品を制作している。 今回の会場に瀬戸市が含まれていることからも、大地と関わる陶芸の技法は大きなポイントになりそうだ。 沖潤子は1963年埼玉県生まれ、神奈川県拠点。生命の痕跡を刻み込む作業として布に針目を重ねた作品を制作。下絵を描かずに直接布に刺していく独自の文様は、シンプルな技法でありながら「刺繍」という認識を裏切り、見る者の根源的な感覚を目覚めさせる。古い布や道具が経てきた時間、またその物語の積み重なりに、彼女自身の時間の堆積をも刻み込み紡ぎ上げることで、新たな生と偶然性を孕んだ作品を生み出す。存在してきたすべてのもの、過ぎ去ったが確かにあった時間。いくつもの時間の層を重ねることで、違う風景を見つけることが制作の核にある。 アル・カシミは沖の作品について、刺繍という手仕事を通してつながる作家とその母との関係について言及。またこうした作品についてフェミニズムの視点から考えることができると語った。「女性に対し半ば強制的に課される仕事ととらえられてきた刺繍という手法だが、沖さんの作品は非常に自由なかたちでなされている。それは女性のアートとしての仕事である」(アル・カシミ) アドリアン・ビシャル・ロハスは1980年アルゼンチン・ロサリオ生まれ、拠点。共同制作やコラボレーションによる長期的なプロジェクトを構想し、大規模でサイト・スペシフィックなインスタレーションを各地で展開してきた。彫刻、ドローイング、ビデオ、執筆、行為や事象の痕跡などを組み合わせながら、ポスト人新世時代における種間の境界線を探る。 アル・カシミは10年に及ぶ長いあいだ作品を見てきた作家としてアドリアン・ビシャル・ロハスを紹介。作家本人も登壇し、作品制作のプロセスなどについて説明した。《Mi familia muerta》は森のなかでクジラのかたちの造形物を作り、そのまま朽ち果てるまでを見るという、自然環境との関わりに言及するサイトスペシフィックな作品だ。