上司の評価を下げずに「NO」を伝える賢い言い方(滝川徹 時短コンサルタント)
■本音の共有がコミュニケーションの出発点️
君は「断るのに感情を添えたら、トラブルになるのではないか」。そう思ったかもしれない。なぜ自分が感じていることを相手に伝えることが大切なのか―それは、こうして心を開くことがコミュニケーションの出発点だからだ。 立場を逆に想像してみよう。君が上司の立場で、部下からつらい心の内・本音を打ち明けられたらどうだろうか。ハッとして、仕事の依頼事なんかよりも現在の様子を聞いてあげるのではないだろうか。 私の経験上、大抵の上司は共感してくれ、思いやりの気持ちをもってこちらに接してくれた。相手との関係性を悪化せずに交渉するにあたっては、感情を伝えるというこの土壌作りがとても大切になる。 「交渉」と聞いて相手とバチバチやりあうことを想像したかもしれない。交渉力とはそもそも「お互いが納得できるゴール」を目指して話し合う力で、相手を言い負かす力ではない。相手とやりあうのはビジネスで得策でないのは君もわかるはずだ。 特に相手が上司とあればなおさらだ。その場では上司が引き下がったとしても、心証が悪くなれば評価にも影響するかもしれない。その結果、仕事もやりにくくなり、長い目で見てさまざまなデメリットが生じることにつながるリスクもある。 大切なのは互いの考えをしっかり理解して話し合うこと。そしてその際は、お互いの本音をしっかりとオープンにすること。そのためにはまず、自分から本音をオープンにしなければならない。そうしなければ相手も本音を晒してくれないからだ。 だが、心の内を晒すのは勇気がいる。場数をこなしてきた私ですら、未だに「恥ずかしい」「情けない」と感じるときがある。しかしこれ以上仕事をかかえられないのも事実。勇気を出して切り出すしかない。君が「エイっ」と気合いを入れて向き合えば、大抵は相手も心を開いてくれるものだ。そうすれば本音で意見交換ができるようになるはずだ。 こうした交渉の土壌作りなしで相手と話し合えば、結果的に言い争いになる。お互いの現状や真意を理解せず、自分の主張だけを一方的にぶつけ合えば、どちらが正しいか・間違っているかを単に議論することになってしまうだろう。 先程も書いたがこれは得策ではない。激闘の末にたとえ君が勝ったとしても、長い目で見ればキャリアにマイナスになりかねない。そして大概は君が負ける。単純に上司のほうが立場が上だからだ。 君が勇気を出したことで話し合いの土壌が整ったら、ここからがいよいよ交渉の本番だ。私の場合、どうやったらこの問題を解決できるか、上司が一緒に考えられるよう提案を行っている。