行列のできる「かき氷」店が真夏に店を閉めたワケ 「一年中やっているかき氷屋」パイオニア的存在として奮闘
かき氷屋なのに夏に店を閉めるというのはさすがに抵抗がありましたが、実はこの頃、真夏に鵠沼で営業をすることに限界を感じ始めてもいました。 「待ち時間が長い」と噂になると、お客さまはどんどん来店時間が早くなる。埜庵があるのはふつうの住宅街です。店の前に人だかりができれば、当然まわりに迷惑がかかるし、かといって並ぶ場所の不足など、物理的な問題は解決しようもありません。 当時は、忙しいときは整理券を配っていました。1時間を4つに区切って、15分ごとに6組ずつご案内するというものです。一日にご案内するのは200組、もしくは400人ほどで、どちらかに達すればその日の分は終了。
行列してもらえば500人以上ご案内できるのですが、整理券にすることで毎日100人以上のお客さまを失ってしまうわけです。 私はお客さまを信じているので、それでも整理券を配ります。でも、本当に帰ってきてくれるかはわからない。ほとんどは帰ってきてくださるのですが、なかには帰ってこない人もいる。テレビなどでとり上げられると来店者数が一気に増えますが、20~30組も帰ってこないということもありました。 整理券を配り終わってしまうと、せっかく来てくださった人に「今日の分は終わりました。ごめんなさい」と頭を下げ続けます。でも、実際には席が空いていることもある。矛盾を感じ、このまま続けていたら心がこわれるなと思い始めました。
■「新しい夏の風物詩をつくる」 一方、デパートの催事場なら、こんなつらい思いをする必要はありません。催事への参加を決めたのは、これが大きな理由でした。 店と違って並ぶ場所は十分にあるし、ある程度の行列ならむしろ宣伝にもなる。エアコンの効いた屋内なので、熱中症の心配もありません。 こうして真夏の間は店を閉めることに決め、デパートの担当者さんとともに「地元・藤沢に新しい夏の風物詩をつくる」という目標を掲げてスタートしました。