【米国株ウォッチ】出遅れ感の目立つ3M、今「買い」なのか?
企業向け素材や消費者向け事務用品を手がける3M(スリーエム)の株価(ティッカーシンボル:MMM)は、米国時間9月10日現在130ドル前後で取引されており、2021年6月につけたインフレ・ショック前の高値の150ドルを約15%下回っている。また、同業のハネウェル・インターナショナルもまた、同期間に約15%下落した。 サプライチェーンの混乱、高インフレ、ドル高、経済成長の鈍化などにより、3Mの売上高は近年伸び悩んでいる。自動車の整備用品やホームセンターなどで販売する製品の売上が減少するなど、3Mの消費者向け事業も最近逆風に直面している。 ■過去の株価動向 3Mの株価は、FRBが利上げを開始する直前の2022年6月には約97ドル付近で取引されており、その水準からは32%回復している。しかし、S&P500種株価指数がこの期間に45%上昇しており、その上昇率には届かなかった。3M株の反発の多くは、2024年4月に同社のヘルスケア事業を新会社「ソルベンタム」として分離したことや、主要訴訟の解決したことなど、同社が収益性改善のためにいくつかのイニシアチブを取った後に見られた。 3M株の過去3年間のリターンは、2021年に5%、2022年にマイナス30%、2023年にマイナス3%となっており、それぞれの年すべてにおいてS&P500のリターンを下回った。 仮に3M株がインフレ・ショック前の水準である150ドルに戻すとすると、株価は現在の水準から約17%上昇しなければならない。しかし、私たちはそれがすぐに実現するとは思えない。私たちは同社の目標株価を117ドルとしており、これは現在の株価を若干下回る水準だ。私たちはこの目標株価を、PER(株価収益率)を16倍、2024年通期の予想EPS(調整後)を7.21ドルとして算出した。このPER16倍という数字は、過去5年間の平均値と一致している。 ■直近の業績動向 3Mの年間収益は、2021年の354億ドル(約5兆円)から直近の326億ドル(約4兆6050億円)へと減少した。収益減少の一因は、防塵マスクなどに代表される個人用製品に対する需要が減少したことなどにある。消費者心理の低迷、ドル相場がもたらす悪影響、自動車のアフターマーケット需要の低下なども収益全体の伸びを圧迫した。 営業利益率もまた、2021年の21.7%から直近12カ月間の3.2%へと悪化した。3MのEPSは、2021年の10.12ドルから現在の1.70ドルへと大幅に減少している。 3Mの負債総額は2021年の180億ドル(約2兆5430億円)から140億ドル(約1兆9780億円)に減少した一方、現金の残高は同期間に約50億ドル(約7065億円)から100億ドル(約1兆4130億円)に増加した。また、過去12カ月間の営業キャッシュフローは60億ドル(約8478億円)のプラスであった。そのことから、近い将来における3Mの財務基盤は盤石だと言えるだろう。 ■結論 FRBは現在インフレ率の暴走を抑えようと努力しており、それが市場関係者の心理に安心感をもたらしている。潜在的な景気後退への懸念が和らげば、3M株には多少の上昇余地があるだろう。しかし、不透明なマクロ経済環境、弱い消費者心理、収益成長に対する逆風が、こうした上昇を実現するための主なリスク要因であることに変わりはない。3Mへの投資を考えている投資家は、下落局面を待つ方が得策ではないかと私たちは考える。
Trefis Team