高たんぱくの最強食材、鶏のむね肉。絶対パサつかない技を料理家・上田淳子さんが伝授
レシピ通りに作っているのに、どうも上手にできない。 毎回、本を見ながら作るのが面倒。 【写真】こんなふうに下ごしらえすると、胸肉がふっくら 料理に自信がなくて、毎日料理するのがおっくう。 そんな悩みを抱えている人は、多いと思います。 料理研究家の上田淳子さんはこう言います。 ****** レシピは、あくまでもあらすじ。 本当に大事なのは、一つ一つの行為にある意味(理由)を理解しようとすること。レシピの行間に潜む、この「ことわり」こそが、料理の要です。 レシピの文字を追ってその通りに作るのではなく、「なぜこのタイミングで?」「なぜこの作業をするの?」、その意味を見つけ出し、それを自分の料理の心得とすれば、料理はずっとラクに、楽しくなります。 ****** 上田さんの新著『レシピ以前の料理の心得』(青幻舎)は、そんな著者の思いがぎっしり詰まった「読む料理本」。ビギナーはもちろん、そこそこ料理できる人にこそ知ってほしい、「もっとラクにおいしく作るためのコツとレシピ」が満載です。50を超える料理から、蒸し鶏、野菜スープ、ふろふき大根の極意を3回に分けてお伝えします。 第1回は、むね肉の蒸し鶏を、パサつかせずにしっとりおいしく作る技です。 蒸し鶏といえばポピュラーな料理ですが、こんなこと知っていましたか? ・もも肉は塩と少量の砂糖をすり込んで下味をつける ・むね肉は、塩と砂糖を溶かした水に漬ける ・鶏は蒸しても、茹でてもいい その理由を説明します。
むね肉の蒸し鶏には、「塩糖水」を使う
冷蔵庫に蒸し鶏があるという安心感。野菜と盛り合わせて好みのタレをかければ立派な主菜に。薄く切って和え物の具にしたり、サンドイッチのハム代わりにも使います。 むね肉ならヘルシーでもありますね。ただ、パサつきやすいし、味がしっかり入っていないなんてことになりやすいのも事実。最近はサラダチキンなど市販品も多くありますが、いつでも簡単においしく作れる方法、知っていると便利ではないでしょうか。 味わいの要は加熱前の下ごしらえにあり。もも肉、むね肉で方法は違ってきます。 もも肉は、肉の重量に対して1パーセント弱の塩、砂糖少々をすり込みます。肉の表面にざらつきがなくなるまでしっかりと。そして1時間以上、できれば半日以上おくと味が中まで入ります。 一方、もも肉より水分が多いむね肉は、肉にダイレクトに調味料をつけるとその塩分によって肉の水分が抜けてしまいます。パサパサと硬くなってしまうのはこれが理由。 そこで、水、塩、砂糖を混ぜ合わせた液一晩浸けるのです。私はこれを「塩糖水」と呼びます。肉の硬い部分を食べるための欧米の調理法を元にしたもの。鶏むね肉1枚に対し、水1/2カップ、塩小さじ2/3 、砂糖大さじ1/2を混ぜ合わせます。 浸けた状態で、肉は5日、魚は3日冷蔵保存可能。長く浸けると味が濃くなるので、肉は3日、魚は2日で塩糖水を除きます。豚こま切れ肉などにも使えますし、その場合は半日ほど浸けるとちょうどいいです。 これらの塩や砂糖は、調味目的もありますが、それとは別にそれぞれ役割を持っています。 まず塩は、塩味をつける以外に肉の筋繊維をほぐして身をやわらかくする働きがあります。だからこそしばらくおいておくことが大事。そして砂糖は、味わいをまろやかにすることに加え、肉の水分を逃がさず保水するパワーを持っています。 塩と砂糖を肉にしっかり入れることで、味つけはもちろんジューシーでやわらかな仕上がりになるのです。 この塩糖水は、肉なら豚もも肉、魚ならカジキや鮭といった、加熱するとパサつきやすいものを浸けるだけで、しっとり仕上がりますよ。