ガザ地区北部で“接近戦” 避難せずにとどまる住民も…なぜ
9日もパレスチナ自治区のガザ地区では激しい戦闘が続いています。北部では、イスラエル軍とイスラム組織「ハマス」の市街地での接近戦も始まったとみられています。それでも、あえて逃げずにとどまるという住民がいます。そのワケは…。 ◇ ハマスが新たに公開したのは、イスラエル軍との接近戦の様子です。街中でロケット弾を放つ場面も映っています。 対するイスラエル軍も動画を公開しました。ハマスが拠点にしているとされる地下トンネルを見つけると、爆破していました。イスラエル軍は、ハマスがパレスチナ自治区のガザ地区北部の支配権を失ったと発表しています。 その北部にあるガザ市や中部にあるブレイジでは、いまも住民による大移動が続いています。目指しているのは南部です。車いすの人や小さな子どももいます。 南部を目指す人 「昨夜は一睡もできませんでした。夜通しミサイルの音がしました。殺されると思い、南に行くことに決めました」 「食べ物も飲み物もなく、(北部の)避難所では生きていけません」 イスラエル軍のハガリ報道官は、人道的な戦闘の一時停止時間をもうけることで住民が南部へ安全に移動できるようにしていると説明していて、「5万人が南部に移動するのを見た」としています。 ◇ 一方、未だに北部に残る人も多くいます。その中には幼い子どもの姿もありました。 パレスチナ難民を支援する国連パレスチナ難民救済事業機関の清田保健局長は、「北部の住民の4割近くがとどまっている」と話します。 国連パレスチナ難民救済事業機関 清田明宏保健局長 「(北部に)残ってる方は30万~50万人ではないかと聞いている」 清田さんは、イスラエルの隣国ヨルダンからガザ地区の病院や避難所へ支援を行っている日本人です。住民が南へ避難しない理由の1つは―― 国連パレスチナ難民救済事業機関 清田明宏保健局長 「非常に厳しい生活状況で水や食料が足りていないので、長距離歩くのは身体的にもかなりしんどいのでは。それから逃げる道筋がない。逃げる途中にあるいは南に行ったときに、また空爆があるかもしれない、そういう恐れを抱いている方がいます」 ガザ地区は、北部にあるエレズ検問所から南部にあるラファ検問所まで約44キロメートルあります。同じ縮尺で東京と比較すると、東京駅あたりから神奈川県の鎌倉市あたりの地域に重なります。 この道のりを徒歩で移動する人々。その間、いつ空爆を受けてもおかしくない状況だといいます。また、南部に行けたとしても… 国連パレスチナ難民救済事業機関 清田明宏保健局長 「南部の避難先は非常に過酷な状況。(各避難所は)多くて1000人か2000人くらいと思っていたが、いまは1つの避難所に6000人以上います。そういう状況をみんな知ってますし、やっぱり北部に帰ろうと、もともとある自分の家に帰ろうと」 ◇ ガザ地区の保健当局は、一連の衝突の死者は1万人以上となっていて、このうち約4割にあたる4000人以上が子どもだと発表しています。 これについて国連の事務総長は、ハマスの責任に触れた上でイスラエルの軍事行動を強く非難。「殺害された民間人の数を見れば、何かが明らかに間違っている」としています。 (11月9日放送『news zero』より)