一般住宅に「回転扉」設置が注目を集めるわけ
住空間に様々な表情
マンションなど個人向けの住宅に「回転扉」を設置し、気分に合わせて変化させる空間作りが注目されている。くるくる回る扉ではなく、開き方や開く角度を変えられる扉だ。手で押すだけで楽に開閉でき、緩やかさが現代の感覚や間取りにマッチしている点も好評を得ているようだ。 東京都渋谷区に住む30代の会社員夫婦は2023年秋、自宅マンションをリノベーションし、回転扉を2枚設置した。1枚の大きさは縦約220センチ、横約160センチ。開き戸と壁の一部を壊した空間を仕切るように、扉は天井や床に通した金属製の軸で支えられている。軽い力で手前や奥に動かすことができ、好きな角度で固定も可能だ。費用は2枚で工事費含め約30万円。
当初、仕切りは引き戸を考えていたが、「部屋に開放感が欲しくて回転扉を選択した。風通しがとても良い」と夫(34)は話す。しゃれた障子のような木枠のガラス戸は、夫婦でこだわったデザイン。通常の引き戸のように床にレールがないため、妻(35)は「すっきりして見えて、掃除もしやすい」と喜んでいる。 この物件を手がけた向坂建築設計事務所(東京)代表で1級建築士の向坂穣さんは「可変性のある間仕切りとして、住空間に様々な表情を与えてくれる」と語る。ただ、扉が回転する軌道内には物を置けないので、家具の配置や生活動線は事前にしっかり検討する必要があるという。
ドアメーカー各社は、一般住宅向けのユニークな回転扉を販売している。 神谷コーポレーション湘南(神奈川)は23年、半回転扉「Soloist(ソリスト)」を発売した。手前や奥に90度回転させることができ、リビング入り口など広い空間に2、3枚連ねれば「動く壁」になる。引き手やハンドル、ちょうつがいがなく、洗練された見た目だ。デザインは2種類あり、工事費を除いた価格の目安は格子戸タイプで84万円~。首都圏などで約100戸施工された。 開き戸がちょうつがいを支点に開閉するのではなく、回転して後方に引き込まれる扉が、ユニフロー(東京)の回転扉「ローリングドア」だ。引き込まれるため開閉に必要なスペースは通常の約3分の1。車いすの人でも楽に動かせる。同社の営業担当者は「都市部の狭小住宅でニーズが高まっている」と話す。 ◇ 一般住宅向けの回転扉が注目されていることについて、1級建築士の尾間紫さんは「空間を緩やかに仕切ることができ、シンプルな空間作りを好む人に向いている」と説明する。省スペースで使い勝手が良く、空間の行き来がスムーズなど利点も多い。 一般的な開き戸よりもスペースが必要な場合もあるので、確認は慎重に。回転部分と壁などの間に手や指を挟んでけがをしないよう、開け閉めや力加減には注意が必要だ。「気密性や防音、耐久性などもよく吟味して選びましょう」(読売新聞生活部 岩浅憲史)