なぜ田中希実は4日間で3種目5レース出場の過酷な戦いに挑んだのか…2種目切符獲得のオレゴン世界選手権への効果は?
日本陸上競技選手権(9日~12日/大阪・ヤンマースタジアム長居)で今年もトラックを一番多く駆け回ったのが田中希実(22、豊田自動織機)だった。4日間で1500mの予選・決勝、800mの予選・決勝、5000m決勝と合計5本のレースに参戦。すべての種目で強烈なインパクトを残した。
最終種目5000mは圧巻のラストスパートでV
初日の1500m予選は4分15秒19で悠々のトップ通過。2日目の1500m決勝は集団のペースが上がらないなか、レース中盤で先頭に立つと、残り1周手前から後続をグングン引き離していく。オレゴン世界選手権の参加標準記録(4分04秒20)を突破している田中は4分11秒83で3連覇を飾り、代表内定を獲得した。ただし本人は不満が残ったようで、「自分の決めたところでスパートして勝てたのは良かった。でも、中途半端なタイムになってしまった」と話していた。 3日目の800m予選は全体トップタイムとなる2分04秒13で通過した。最終4日目となる12日は16時20分に800m決勝、17時35分に5000m決勝という過密スケジュール。しかも、ともにオレゴン世界選手権の代表がかかっていた。 800mは参加標準記録(1分59秒50)が日本記録(2分00秒45)より速く、ペースメーカーのつかない日本選手権で狙うのは現実的ではない。しかし、ワールドランキングで出場チャンスをつかめる位置につけており、田中は「2分05秒以内で3位以内」をひとつの目標に置いていた。 一方の5000mはすでに参加標準記録(15分10秒00)を突破。3位以内に入れば代表に内定するが、田中以外にも4人が参加標準記録をクリアしている大激戦種目だった。 安全策を考えれば800mは回避して、5000mに絞るべきだろう。しかし、田中は自身が求めていた挑戦から逃げることはしなかった。わずか75分の間隔で実施される“究極の中長距離ゲームズ”が始まった。 800m決勝は1周目から塩見綾乃(岩谷産業)が飛び出す展開になり、田中は2位集団の後方についた。「残り200mまでは無理せずに、ラストは脚が止まるほど行くんじゃなくて5000mにつながるようなラストスパートを意識しました」と田中。最後の直線で猛追するも、2分04秒51の2位でレースを終えた。 2つめのタイトルは逃したが、「800mは逃げずに(目標を)完遂できたという自信を得て5000mを迎えたことが気持ち的にもプラスになったかなと思います」と心身ともに充実していた。