企業向けサービス価格が32年半ぶり高水準、賃金転嫁に広がり-日銀
(ブルームバーグ): 企業間で取引されるサービスの価格に人件費の上昇を転嫁する動きが広がっている。日本銀行が28日に公表した4月の企業向けサービス価格指数は、消費税率引き上げの影響があった期間を除き32年半ぶりの高い上昇率となった。
4月の同指数は前年比2.8%上昇と、消費増税の影響を除くと1991年9月の3.2%上昇以来の伸び。上昇率の拡大に寄与したのは、諸サービスや運輸・郵便などで、4月の価格改定のタイミングに合わせて機械修理や教育訓練サービス、土木建築サービスなどの伸びが加速した。
運輸・郵便では、トラック輸送の運転手の時間外労働を規制する2024年問題への対応を含めた人件費上昇も値上げの要因になった。調査統計局・物価統計課の東将人課長は、4月の企業向けサービス価格について「人件費や諸コストを転嫁する動きが広く見られた」としている。
日銀は2%の物価安定目標の実現を目指し、高水準の賃上げをサービス価格などに転嫁する動きが広がるかを注視している。4月の全国消費者物価指数(CPI)ではサービス価格は1.7%上昇と2%を割り込んだが、川上にある企業間の取引からは、価格転嫁の動きが続いていることが確認された形だ。
日本総合研究所研究員の北辻宗幹氏は、「幅広く価格が上がってきている。一つの品目が持ち上げているというより、賃金が全体で上昇し、人件費の上昇を価格転嫁する動きが強まってきている」と指摘。日銀の利上げは10月がメインシナリオとした上で、円安などコストプッシュ要因で物価の伸びが高まる場合は「7月に早める可能性は十分ある」との見方を示した。
日銀は3月の金融政策決定会合で17年ぶりに利上げを実施した。その後も続く円安を受けた物価上振れリスクの高まりもあり、今後の利上げ時期とペースへの関心が一段と高まっている。ブルームバーグによる4月のエコノミスト調査では、次回利上げの予想は10月が41%と最も多く、7月が19%、9月が17%で続いた。リスクシナリオとして利上げの最も早いタイミングも尋ねたところ、7月の52%が最多となった。