スルメイカ不漁...海のデータをリアルタイムで活用した新たなイカ漁【WBSクロス】
かつては手頃なつまみだったはずのイカが、近年値上がりしています。気候変動の影響などで、漁獲量が急減したためです。漁獲量を安定させようと、スマート化による「新たな漁業」に挑む動きが始まっています。 東京・八重洲の東京イカセンター。店のいけすには、イカが生きたまま泳いでいます。注文が入ると、いけすから取り出されて厨房で刺身に。丸々1匹分で提供されます。店では全国の港で朝とれたイカを直送しているのですが、ある異変が起きていました。深刻なイカの不漁です。 イカの中で代表的なスルメイカの漁獲量は9年間で6分の1ほどになっています。温暖化で水温が変わり、生息場所が変わったことが要因の一つとされています。これに合わせ、平均価格は年々上昇し、同じ時期に3倍にまで跳ね上がっています。
海のデータ生かす“新イカ漁”
石川・金沢港にイカの不漁という問題を解決しようと新たな漁業に挑む人たちがいます。取材班は小型イカ釣り漁船「濱出丸」で夜通し行われるイカ漁に密着しました。 船頭の本間正志さんにイカの不漁について聞くと「イカの漁獲量は5分の1。下手すれば10分の1くらいの量」だと言います。この状況を打破する新たな漁業の鍵を握るのが乗船している「水産研究・教育機構」の調査員、鈴木大智さんです。大学でイカの遺伝子などを研究し、その後、機構に就職。今は漁師に密着し、海のデータを取り、それを漁に生かすサービスを開発しています。 出航から5時間。鈴木さんが取り出したのは水温や塩分濃度の観測機です。イカ釣り機のワイヤーにつけ海底に下ろすと、わずか数秒で水温と塩分濃度の観測が完了しました。観測したデータは、まずタブレットに転送され、その後自動的に東京に送られ、解析されます。 このサービスの裏には、業界をまたいだ連携があります。担当者が船で海水を観測し、KDDIの通信で海の上からそのデータを送信。データを受け取ったスタートアップの「オーシャンアイズ」が分析し、すぐにリアルタイムの海洋モデル予測を提供しているのです。